内容説明
国交正常化以来の友好の時代を経て、日中関係は、大きな転換期を迎えている。「反日」デモや領土・領海をめぐる衝突など政治的な緊張感を増すなかで、日本は、新たなグローバル・パワーと化した中国とどう向き合うのか。現代中国外交の実像を多角的に読み解きながら、来たるべき日中関係を模索する。
目次
第1章 日中正常化四〇年をふり返る
第2章 一九七二年体制を考える
第3章 「反日」の高まり
第4章 制度化の試みと蹉跌
第5章 日中衝突―領土・領海をめぐるパワー・ゲーム
第6章 モデルとしての米中関係
第7章 中国外交をめぐる問い
第8章 外交行動としての軍事力行使
第9章 中国の変身とリアリズム
終章 二一世紀グローバル大国のゆくえ
著者等紹介
毛里和子[モウリカズコ]
お茶の水女子大学文教育学部卒業。現在、早稲田大学名誉教授。専攻は現代中国論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
45
3年近く前の本なので、トランプ以後の動きがないが、日中関係、中国の行動様式についての視角、さらには現代中国の国際関係専門家がどのような見方をしているかを知ることができた。日中関係は一言で言えば感情がつっかえ棒になっている印象。そして日本の現政権がそうした感情を煽る立場を支持母体としている。ただ、そのあたりもう少し突っ込んだ議論も欲しかった。例えば日本バッシングが中国の国内不満に対する「ガス抜き」効果を持ち、日本の「嫌中」にも同様な面があること(中国の成長に対する一種の「ひがみ」も作用していると思う)。2020/01/22
おさむ
38
村上春樹は日中の領土ナショナリズムを安酒を飲んで悪酔いするのと同じと論じた。ほんの数杯で酔っ払い頭に血がのぼり、声は大きくなる。夜が明ければ残るのは嫌な頭痛だけ。複雑さを増す両国の関係を1972年の国交正常化からの歴史を振り返り、分析する良書。かつての日本軍人と民衆は別とする二分論はもはや否定された中国。2005年の反日デモと12年のデモは様相が違い、歴史や価値、地域パワー、領土や資源など具体的利益を含む紛争になった。いかに悪酔いから覚めるか。関係の制度化、多国間の協力関係で考えていくしかあるまい。2017/10/29
おせきはん
7
これまでの対外軍事行動が軍事的目標や領土拡張的目的ではなく政治や道義によるものだったと言いながらも、領土が核心的利益の一つとなっている現在、リアリズムと力のどちらを重視するかを選択してきた中国の外交がどの方向に向かうのか、難しい局面にあると感じました。2017/06/17
matsu
3
中国が何を最優先にしているのか、それによりどのような外交を展開してきたかが非常に分かりやすく書かれていた。抗日運動は日本で言われているほど国家主導ではなく、草の根的である点は驚き。2017/05/19
nagoyan
3
優。前著「日中関係」も読んだはずなのだが…。さて、中国の台頭に輝かしいアジアの世紀の未来を感じていたのは、今は昔。リアリズム外交と国家主権のもと、国際社会において中国は「大国」としての権益主張ばかり行い、大国として求められる振舞いには無頓着であるかのようだ。本書は、中国外交の変わらぬ点、変貌した点を、極力冷静に見つめようとする。とはいえ、「おわりに」で昭和天皇の戦争責任等に言及する件は唐突な印象がぬぐえない。赤裸々な自国優先主義のリアリズムに徹する中国に、戦争責任論・道徳論はただの自己満足に終わらないか。2017/05/16