出版社内容情報
文化の格闘、近代化への情熱と苦闘。
内容説明
清朝末から中華人民共和国建国までの世界的激動期、中国の知識人は儒教的世界観の更新に立ち会い、西洋の知と格闘した。社会進化論や立憲思想の衝撃はナショナリズムと革命思想に展開し、雑誌メディアには生命論から民族論まで様々な論争と漫画表現が花開く。貴重な資料と最新の研究から読み解く労作。
目次
1 清朝末期と初期グローバル化(前近代思想史の俯瞰;西洋文明との遭遇から洋務へ―教育・出版の整備;変法運動期の伝統の創造;清末立憲準備と民族/共和革命)
2 中華民国と新文化の潮流(「共和国」の成立―混沌から五四新文化運動へ;南京国民政府期の文化建設;抗日戦争期以降の文化と思想論戦)
3 中華人民共和国への展望
著者等紹介
坂元ひろ子[サカモトヒロコ]
1950年生まれ。現在、一橋大学名誉教授。専攻、近現代中国思想文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
49
清末から第二次世界大戦、おまけに中国共産党下での中国の思想の変遷を扱った一冊。兎に角人名と思想が次から次へと頻出するので、もう付いていくだけで精一杯。一つ一つの思想を追う頁数は無いに等しいので、本当に流れを追っただけという感じであった。でも清末期に西洋の思想を受容してから、ナショナリズムが発生するまでや、ジェンダーの扱いやマルキシズムに関して等、流れ自体は興味深いものであったが。日本の幕末からの思想の流れに共通するような気もする。ただ前半は興味深かったが、共産党以降になると急に無批判に。岩波の限界かなあ。2016/08/06
のり
8
アヘン戦争を経験したのちの列強と近代化のインパクトは中華思想を脅かし、いまいちど政体と思想をとらえ直し強める契機となった。輸入思想と自国の連綿と紡がれてきた思想との結合と背反。日本のように矛盾や綻びを気に留めない姿勢とは異なり、徹底して中国という位置を思考し続ける思想家たちの熱量が印象的だった。大陸の大きさ、人民の多さもさることながらそこから湧き立つ思想や文化のエネルギーは今後経済の台頭とともに大きく世界に羽ばたいていくだろう。共産党のこれからの舵取り如何に大きく左右されるが、人民の熱量を期待してしまう。2019/08/03
さとうしん
6
「革命思想」を含めた外国の思想をどのように受けれたかという問題やジェンダーに関する問題が中心となっているが、顧頡剛や聞一多といった「国学大師」の活動を時代の全体の流れの中でどう位置づけられているかが個人的な読みどころだった。胡適や傅斯年の例が目立つが、「新中国」成立の前後に台湾を含めて海外に亡命した文化人は存外少ないという指摘が意外。2016/05/24
とんこつ
4
西洋思想との遭遇が近代中国にどのような影響を齎したのか、清王朝末期から日中戦争を経て現代までの展望を射程にいれた思想文化史。夥しいの数の知識人が出てきては、百人百色の持論を展開し、それらの議論が生む爆発的なエネルギーの中で近代中国の理論的支柱が構築されていったことが読み取れる。この間、いくつかの大きな革命や動乱が起こるが、およその革命(的事件)において、言葉の革命と新しいメディア(雑誌)の登場があったことは興味深い。時代の変わり目のなかで文化は社会にどう影響を与えるのかとの観点から読んでも面白いと感じた。2017/04/14
rubeluso
3
とにかく大量の人名と主義主張をわっと浴びせられるので、年表として使う分にはいいかもしれないけれど新書として読むには辛い。女性史への注目やアナキストたちへの説明が詳しいのは従来の思想文化史に比べれば特色かもしれないが、とにかく読んでいて眠くなった。2016/07/13