出版社内容情報
建武政権、室町幕府の樹立から応仁の乱まで、権力をめぐる天皇・武士の動きと、人々の暮らしを描き出す。
内容説明
足利尊氏はなぜ鎌倉幕府打倒に動いたのか。南北朝動乱が半世紀も続いた理由とは。その後、展開する公武一体の政治の流れをおさえつつ、戦に赴く在地の武士の行動様式、連歌・茶会などの「伝統」文化、現状につながる村々の形成などを見ていく。応仁の乱で再び京が灰燼に帰し戦国前夜へと至る、室町時代の全体像を描く。
目次
第1章 建武政権と南北朝の内乱(鎌倉幕府の滅亡と建武新政;南北朝の内乱戦乱と村々;内乱の終息)
第2章 もう一つの王朝時代(義満の登場;公武一体の時代;「伝統文化」の誕生)
第3章 南北朝・室町時代の地方社会(現代に続く村;室町幕府の地方支配体制;室町時代の荘園;交易の展開)
第4章 室町公方の理想と現実(徳政と武威;公方の蹉跌;室町幕府体制の動揺)
第5章 動乱の始まり(土一揆・飢饉・戦乱;応仁・文明の乱とその後)
著者等紹介
榎原雅治[エバラマサハル]
1957年岡山県生まれ。1982年東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、東京大学史料編纂所教授。専攻、日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
46
【中世30】中世史を読み始めて鎌倉時代前期をうろうろしていたが、にわかに山城が気になってきた。山城と言えば戦国時代だが、いきなりそこに飛ぶのもどうかと思ったので、最も簡単に読めそうな本書を手にした。本書は鎌倉時代と戦国時代をつなぐという意味ではぴったりの本だった。■通史として、要領よく政治史を追いながら、書名にある通り地域史、つまり荘園がどう変化したかにも力点を置く。文化史にはあまり触れられないが、室町時代という時代の意味は充分に描かれている。つまり、現在の村落の姿が、室町時代、だいたい14世紀に姿を↓2022/05/14
Book & Travel
43
最近ブームの室町時代。話題の本も読んだが、全体を理解したくて本書を手に取った。南北朝動乱に始まり、相次いで起こる戦乱と、その中で発展する伝統文化や地方社会。著者も思いきって単純化したと書いているように、本書ではそんな混沌とした時代を簡潔に纏めてあり、とてもわかりやすかった。留守を心配しながらも生きるために戦に出ざるを得なかった無名武士の手紙等、生々しい実例も興味深い。室町は現在につながるといわれるが、その続いてきた長い時代が高度成長期以降終焉を迎えようとしているのではないか、という著者の言葉が胸に残った。2017/06/21
chanvesa
35
中世の人々の所有の観念「本来の持ち主の強い権利を認める観念であり、売却ですら仮の姿であって、為政者の代替わりや大きな天災のような変事があれば、元の持ち主のところに戻って当然とする期待」(188~189頁)という指摘は大変面白い。この観念がもたらす「徳政」という政治的ルネサンスは、ポスト鎌倉幕府の行政や司法をいかにハンドリングしていくかを決めながらも、再び京都を政治の中心地にしたことが見えてくる。そしてカリスマ的正統性がヘロヘロになっていた天皇制に足利政権も頼らざるを得なかったことの一端もあるかもしれない。2017/05/03
Toska
34
読みやすく分かりやすい、新書サイズの通史としてはお手本のような内容。「人名を憶えるのが苦手」という著者の歴史家にあるまじき(?)告白に共感が広がっているが、一方でこの人は地名マニアでもあるようなので騙されちゃいけない。実際、室町期から現代まで引き継がれた地名、あるいは集落そのものの分析は本書の柱の一つとなっている。この時代は新たな耕地の開発が限界に達し、それが様々な社会的再編(戦乱)の呼び水となったという重要な結論。2025/05/16
D
29
よく考えれば、鎌倉幕府の滅亡から江戸幕府の成立までは、ずっと戦乱の時代だったんじゃないかと思う。鎌倉幕府滅亡からの戦国時代→小康→応仁の乱→大戦国時代みたいなイメージが浮かぶ。2025/04/17