内容説明
食事の支度や後片付け、洗濯、掃除、育児に介護…。だれもが必要とする「暮らしの営み」のはずの労働が、なぜ正当に評価されないのか?不公正な分配が、いかに生きづらさや貧困を招き寄せていくか。終わりなき「見えない労働」を担う人々が、社会から不当に締め出されている実態に光をあて、困難から抜け出す道を内外にさぐる。
目次
序章 被災地の百物語
第1章 元祖ワーキングプア
第2章 「専業主婦回帰」の罠
第3章 法と政治が「労働を消す」とき
第4章 男性はなぜ家事をしないのか
第5章 ブラック化するケア労働
第6章 家事労働が経済を動かす
終章 公正な家事分配を求めて
著者等紹介
竹信三恵子[タケノブミエコ]
ジャーナリスト・和光大学教授。1953年生まれ。朝日新聞経済部記者、編集委員兼論説委員などを経て、2011年4月から現職。2009年、「貧困ジャーナリズム大賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パフちゃん@かのん変更
83
重い内容です。問題点は明らかだが、じゃあどうすればいいのかが分からない。保育園が十分あって、男性も女性も必要なときに自由に休みが貰えて、たとえ短時間労働になっても、同一労働同一賃金で正社員と大きな賃金格差が生まれない様にすればいいのか。今は、女性が損な役割を甘んじて受け入れたり、非正規社員が人件費を減らしているから、日本の企業はなんとか回っているみたいなところがある。最低賃金1000円とかにすると、潰れてしまう所もたくさんあるのだろうし・・・。政府も介護や福祉にお金を使いたがらない。2015/05/12
ネギっ子gen
59
【終わりなき「見えない家事」にフォーカスした書】「あとがき」にて、<家事と育児と会社の長時間労働のはざまで、なぜこんなに働きにくいのかと悩み続けていた。悩んだ挙句、私はその苦しさの根に、家事労働という仕事を、労働時間でも社会政策でもまったく考慮せず、とにかく家庭や女性に丸投げさえしておけば収まると思い込んでいる日本企業の労務管理や政府の社会政策があると思いあたった>と。その発見を共有してほしくて、雑誌『くらしと教育をつなぐWe』に「家事神話――女性の貧困のかげにあるもの」を寄稿。その連載を土台に新書化。⇒2020/07/21
Miyoshi Hirotaka
54
主夫歴が6年を越えた。学歴なら大学院卒。この間、家事を雑用と考えていたことを大いに反省したり、その奥の深さに唸ったり、孤軍奮闘を嘆いたりと態度がぶれてきた。無償労働なのに、有償労働以上のキャリアが必要で、中食、ディリバリー、通販、スマート家電など、家事のお助けサービスは色々あるが、主婦の在宅が前提になっているため、節約した時間の有償化は難しい。晩婚化により育児と介護が重なれば、家事はブラック化し、社会の再生産は危機に瀕する。これを回避するためには、男女間の有償労働と無償労働を社会全体で再配分することだ。2019/03/02
香菜子(かなこ・Kanako)
38
家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの。竹信三恵子先生の著書。これまでの日本社会が不平不満の一つも言わずに無償の家事労働をしてきた女性たちの犠牲のもとに成り立ってきたことがわかりました。家事労働はするのであれば男女が同じように負担すべきものだし、家事労働をしない、家事労働を外注するという選択もできる。家事労働ハラスメントで女性たちが苦しむような社会は変えていかないと。2019/09/28
更紗姫
32
「まったくもってその通り!」という内容を、実に真っ当に出版してくれた。男女問わず多くに読んでもらいたい。だが、キチンと浸透するには、まだまだ時間がかかるだろう。既に題名の〈家事ハラ〉が、マスコミによって歪められた使われ方をしている。他にも、文中〈草食系男子〉命名者の「意図するところと全く逆のイメージが流布されてしまった」との言葉にびっくり、「本当は悪口じゃなかったんだ」。取り上げ方ひとつで意味が変わるのは、朝日新聞の誤報道の通り。論調に左右されず、自分自身で確認・理解できる見識と習慣を身に付けたいと思う。2014/09/13