内容説明
半世紀前にアジアからの留学生に出会い、その後、著者は、在日韓国・朝鮮人や留学生、労働者、難民などを取り囲む「壁」を打ち破るために、長年にわたって尽力してきた。最新のデータとともに、入管法の大幅「改正」のほか、高校の無償化など外国人学校をめぐる問題についても語る。ロングセラーの最新版。
目次
序章 アジア人留学生との出会い
1 在日外国人はいま
2 「帝国臣民」から「外国人」へ
3 指紋の押捺
4 援護から除かれた戦争犠牲者
5 差別撤廃への挑戦
6 「黒船」となったインドシナ難民
7 国際国家のかけ声のもとで
8 外国人労働者と日本
終章 ともに生きる社会へ
著者等紹介
田中宏[タナカヒロシ]
1937年東京都に生まれる。岡山県出身。1960年東京外国語大学中国学科卒業。1963年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。アジア学生文化協会勤務、愛知県立大学教授、一橋大学教授、龍谷大学特任教授を経て一橋大学名誉教授。専攻は日本アジア関係史、日本社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sayan
22
例えば、経産省は「ダイバーシティ企業経営」、総務省は「(多文化)共生社会」を謳い外国人をどう日本社会に位置付けるかを試みる。美しい言葉が並ぶが、要は外国人(ここでは、交流ではなく定住外国人)を日本社会を担う「利害関係者」としてどう取り込むか、政策論だ。本書は最近の表面的な政策評価を試みるものではない。戦前から戦後にかけて日本政府の政策転向に焦点をあて、いま顕在化する外国人を巡る様々な課題の根底を探る。改正入管法案議論が進む中で押さえておくべき歴史的背景を記述する。新書らしからぬ中身の濃さ。読むべき書籍だ。2018/12/29
Miyoshi Hirotaka
20
外国人問題は朝鮮人問題と読替えられる。朝鮮人は1910年代に急増、最盛期は230万人に達した。大部分が帰国したが、1946年には64万人。半島に国家が成立したことで、朝鮮人は外国人の扱いになった。北が帰還を促進したのに対し、南は帰国を拒否し、実質難民化。その後、インドシナ難民発生に伴い、人道面での施策が進み、アジアからの出稼ぎ常態化に伴い、定住や就業でのガラスの壁は徐々に破られていった。一方、民族主義的で反日思想をもち、反社会的勢力や暴力的極左とつながり、人口に対し犯罪比率の高い集団の扱いに苦慮している。2020/02/15
skunk_c
16
名著。初版、新版も読んだが18年経って出された本版では、「その後」についても取り上げられている。著者自身の体験を経糸にしながら、統計データ、制度や法律、そして様々な事件を織り込んで、在日、特に朝鮮半島から戦前やってきた人たちの置かれた差別的状況の具体と、それに対するたたかいと変化を丹念に示している。その中で際立つのが政府の腰の重さ。縦割り行政の弊害もあろうが、理解ある官僚もいる中、基本的に外国人を「異質なもの」とできるだけ遠ざけようとする姿勢が目立つ。最近の韓国が地方選挙権など改革を進めているのと好対照。2016/08/10
すみけん
12
グローバルだの国際化だのを謳っているわりに、在日外国人の人たちへの配慮が日本はまだまだ足りないことを思い知らされる。地方選挙への参政権もしかり。開かれた、共に生きる社会を構成していかないと、これからの未来は立ち行かない。2017/03/23
二人娘の父
11
在日コリアン関連の書籍では必読ではないだろうか。さらに言えば日本政府がこの問題で一貫して取ってきた無責任かつ排外的な対応を系統的に客観的に学ぶためにも、多くの方に読んでもらいたいと思う。近年問題になっている入管での在留外国人への差別的な対応の根源にも、こうした問題が横たわっていることが分かる。日本の独立を前後した国会での答弁などは、読んでいて怒りを感じる。サブタイトルに著者の思いが込められていることも読んでみると納得できる。2022/05/27