内容説明
文書はかつて何があったかを示唆するナマの証拠である。これを主たる材料として、私たちは過去の出来事の再現に挑む。「風林火山」の軍旗で知られる戦国大名、武田信玄・勝頼父子の文書を読み解き、その人となり、滅亡に至る経緯を明らかにした一冊。文書の作られ方から丁寧に説き起こし、通説を根本から洗い直す。
目次
第1章 信玄・勝頼の文書とは(「究極の難文書」;文書の様式とその変化;偽物と改竄;年代の判断)
第2章 文書はこう読め(正確な読解―小さな不注意から文意が正反対に;細部への目配り―文書の裏側から意外な事実が;ふたたび「究極の難文書」)
第3章 文書はこう作られる(文書を求める;文書を作る;手紙に朱印を捺す)
第4章 信玄とはこんな男(信玄自筆の文書;信玄の能力と趣味;どろどろした人間関係;弱気と強気と)
第5章 信玄・勝頼の歩いた道(駿河を攻める;天下を狙ったわけでは…;勝頼の苦悩)
著者等紹介
鴨川達夫[カモガワタツオ]
1962年東京に生まれる。1988年東京大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻は、戦国時代史。東京大学史料編纂所助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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古古古古古米そっくりおじさん・寺
48
この著者の『武田信玄と毛利元就』が面白かったのでこれも挑戦。しかし1〜3章は武田家の文書を使った古文書入門みたいな内容である。興味が乏しいので斜め読み(@_@)。やはり私に面白いのは4〜5章。信玄の人となりと武田家の末路。勝頼は上杉、織田と仲良くやろうとしていたが信長は許さない。何故なら原因は信玄にあった。確かに信長の怒りは尤もである。信虎以来父子問題が悪い家だ。オイディプス一家というべきか。2012/12/28
鯖
15
半分以上が武田家というよりも、古文書の解読方法や花押や朱印についての説明だったので、ちょっと肩すかしかも。勝頼については、信玄と信長があれだけもめた後では和睦を図ろうとしても無駄だったろうとばっさり。まさに親の因果が子に報い。勝頼はとてつもなく善人だったろうけれど、もうどうしようもなかったんだろうなあ。今年の大河で一躍、悲劇のヒロインに躍り出てしまった勝頼様だけど、判官贔屓と一緒で、それはそれでありなんじゃないかなあとも思う。三成や関ヶ原の西軍びいきのように、そのうちまた逆ぶれするだろうし。2016/02/07
浅香山三郎
14
帰省の移動時間に読了。武田信玄と勝頼の発給文書を使つて、中世文書読み解きの実践を試みてゐる。地を這うやうな検討のスタイルは、さすがに史料編纂所の先生だと感じる。年の記載のない文書(書状ではこれが大半)を年代比定する作業の面白さと危なさ、読み方によつては幾様にも取れる書面の内容(誰が誰に何を伝へてゐるか?)の推理。それらの基本的作業の組み合はせにより本来、歴史の叙述をすべきなのに、実際には結構いい加減な検討によつて、「ありもしない事実」が作られてゐる場合がままあること等、危なさの面も具体的に示されてゐる。2016/12/29
エリナ松岡
12
実はタイトルの信玄&勝頼はオマケ的な扱いなので、それ目当てで肩透かしをくらう人も多いみたいですが、僕の場合は期待通りの古文書分析の入門であったので楽しく読めました。前半は英文読解をするように、具体的に1つずつ古文書を読解していきます。と言っても参考書のような無味乾燥な感じではないです。後半はそのオマケの信玄&勝頼を足取りを追っていきます。やや駆け足気味ではあるんですが、古文書を丹念に分析して得られる事実の断片を頼りに、通説に異を唱えつつ、等身大の人物像を描いていくのは中々渋くて良い感じでした。2016/02/21
おらひらお
6
2007年初版。武田家の文書を使って中世文書の読み方や面白さを示したものです。最後の方に信玄と勝頼の概観していますが、いちど信玄が信長に敵対したことで、勝頼の和睦政策が成り立たなかったと著者は解釈しています。タイトル買いした人はすこし違和感を覚えるかもしれませんね。 2014/02/21