出版社内容情報
嵐の夜の水門でずぶぬれで悪戦苦闘している父さんを助けたのは,戦地にいるはずの兄さんだった…….日常の暮しの中にふっと姿をあらわす幻.神秘的な体験をした子どもたちがかいま見た人生の真実.
内容説明
この本は、フィリパ・ピアスが一九七七年に発表したThe Shadow‐Cage and Other Tales of the Supernaturalを訳したものです。「影の檻」をはじめ、十の短篇がおさめられていますが、もとの題名が示している通り、すべて私たちの人生をときどきおおうことのある暗闇と、自然を超えて人生に働きかけるふしぎな力を扱った作品ばかりです。しかし、テーマは「超自然」であっても、作品をつらぬいている方法は、あくまでもきびしい内面的なリアリズムです。小学5・6年以上。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
246
著者ピアスの10編からなる短編にて編まれている。本書の原題は『The Shadow-Cage and Other Tales of the Supernatural (影の檻と超自然のその他の話)』で題名だけを見ると、今流行りの怪談モノのような感じがするが、実は怪奇現象はとても控えめな描写で登場人物の内面におけるリアリズムを追求した作品であり、読者に恐怖ではなく、漠然とした不安感を抱かせる物語と言えよう。ある意味近代日本文学における”私小説的”な雰囲気を持った1冊に仕上がっている。2019/05/17
NAO
85
人の心に巣くう闇。イギリスの風土に根付いた超自然のもの。そういったものを描きながらも、ピアスの作品の背後には、人生に対する厳しい目が光っている。「ミス・マウンテン」、「ジョギングの道づれ」は、人の悪意が強烈な生霊のようなものになるという、なんとも不気味な話だ。悪意は、相手だけでなく、いつの間にか思っている本人をも蝕んでしまうのだろう。2019/09/03
keroppi
71
【日本の夏は、やっぱり怪談】〈其の二・洋編〉この本のこと何処で知ったか忘れてしまったが、このイベントに合わせて読んでみた。怪談というほど怖い話ではないが、怪異なるものが人に関わる短編集。人の思いが、形を変えて現れる。「恐れ」より「人」に焦点が当てられた怪異譚と言えるだろう。2022/07/23
ちえ
44
超自然だけではなく人の心の奥にある闇の部分…それが怖かった。確かに強い恐れや憎しみという気持ちが場所や物に取り付いたり残っていることもあるかもしれない…。「ミス・マウンテン」「お父さんの屋根裏部屋」が怖かったなあ。「犬がみんなやっつけてしまった」は何だか本当にありそう。「水門で」は松谷みよ子の戦争再話を思い出ししんみり。「アーサー・クックさんのおかしな病気」はハッピーエンドみたいだけど、これで本当にいいのかしら…◆「祝・生誕100年―フィリパ・ピアスとローズマリ・サトクリフを読む」参加2019/09/07
Mizhology
33
ピアスさん4冊目。原題通り、supernaturalなお話。小タイトルのセンスが良いので、表題がちょっと残念。読友さんのお勧めが無ければ読まずにいたかもしれません。「影の檻」が怖ろしく、読みすすめられるか不安でしたが、「あててみて」で一安心。数々の不思議なお話の底にはピアスさんらしいあたたかさが流れていた。冷静なリアルな描写と両立しているのがすごい。雨月物語を思わせながらもユーモアもあり、身近に感じた。初めて読んだ『トムは~』の時にも感じたけど、ピアスさんは所謂視える人なのだろうか。2019/10/22