感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
70
「もはや故郷をもたない人間には,書くことが生きる場所となる」という、ユダヤ系ドイツ人の哲学者アドルノの言葉を噛み締めよう。 あるいは、「故郷から離れ,つねに希望と不安にさいなまれながらタイプライターに向かい,必死で自分の場所をつくり出すように書きはじめる瞬間.まさにこの瞬間,この場所ならぬ場所において,「西インド作家」が誕生するのである」という言葉を銘記してみるのもいいかもしれない。 2005/08/22
吟遊
13
在日韓国人による「離散した人々」をめぐる世界旅行。主にヨーロッパでユダヤ、ナチス、芸術祭でみた作品などに触れながら、世界にいる広義の「ディアスポラ」たちへ思いを馳せる。著者の孤立の実感が強いだけに、文章の全体からにじむものがある。2017/07/11
sabosashi
6
徐京植のことは、ずっと前にプリーモ・レーヴィについてのTV番組を録画して何回か見たことがあった。 この本は、在日朝鮮人ということにこだわりながら、そこから遥か彼方まで旅立っている。 兄たちが政治犯として韓国にて捉えられていたこともあり、韓国のことまで客観化できている。 そのへんは、B・アンダーソンのナショナリズム論にかかわってくる。 問題は、どのくにに帰属するかではなく、帰属できない状態、帰属を拒否される状態があるということ。 2014/09/19
ishii.mg
3
まだまだ、知らないことが多い。実感。徐の生きた人生はどれほど理不尽だったことか。けれども徐の人生は例外ではない。徐の他の作品やプリーモ・レーヴィ、可能ならばアミリーも探して読んでみなければ。 2024/02/17
すのす
2
かなり前に買って積んでいたが、本棚整理の際に発見し、新潟酒の陣への行き帰りで読了。単純なユダヤ人の離散とは少し異なる。アート、詩、政治などさまざまなテーマを行き来しながら、祖国・母国・故国が一致できないディアスポラのアイデンティティについて、自身も在日二世コリアンというディアスポラである筆者の見聞から描いた、という感じか。難しいというか消化不良感を感じるのは、読んでる自分の祖国・母国・故国が一致してるからと、想像力の貧困があるかもしれん。せめて、少しは自身を相対化できた、のか?2018/03/11