出版社内容情報
日中戦争はもう一つのアヘン戦争であった.昭和一二年以後,日本は内蒙古にかいらい政権を樹立,ここを中心に莫大な量のアヘンを生産し,中国全土にアヘン・麻薬を流しつづけた.その害毒はじつに戦慄すべきものであった.著者が発掘した決定的な資料をふまえて,日本が日中戦争においておこなった最大の国家犯罪の全貌に迫る.
内容説明
日中戦争はもう一つのアヘン戦争であった。昭和12年以後、日本は内蒙古にかいらい政権を樹立、ここを中心に莫大な量のアヘンを生産し、中国全土にアヘン・麻薬を流しつづけた。その害毒はじつに戦慄すべきものであった。著者が発掘した決定的な資料をふまえて、日本が日中戦争においておこなった最大の国家犯罪の全貌に迫る。
目次
幻のアヘン資料―プロローグ
1 アヘン・麻薬と中国・日本
2 蒙彊・華北占領地のアヘン政策
3 華中・華南占領地のアヘン政策
4 アヘン政策の推進
5 大アヘン政策の展開
6 毒化政策をめぐる攻防
国家の犯罪―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
13
アヘン戦争で中国を「毒化」したイギリスの後継者となった大日本帝国。現地で末端の取引を担ったのは、朝鮮・台湾出身者が多かったとのこと。台湾の麻薬対策をになった後藤新平と星製薬の話も読んでみたい。2021/01/10
よこ見
12
戦前の日本は国内では阿片等を禁止する一方、植民地では税収の一つとして容認していた。中国大陸においても関東州における形だけの取締や専売組織の設置に始まり、やがては日本の占領地で国家規模の生産統制や密貿易を行うまでに至っていた。日中戦争の背後で行われた隠れた攻防はまさに第二の阿片戦争と呼ぶにふさわしい。遅れてきた帝国主義国家である所の大日本帝国が百年遅れて大英帝国にも似た狼藉を行っていたと知り、恥ずかしいやら悲しいやらである。2020/09/20
coolflat
12
日本は日清戦争後の台湾でアヘンをどう扱うかという問題に直面した。日本が実施したのはアヘン厳禁政策ではなく、アヘン漸禁政策と専売制度だった。建前は厳禁政策ではアヘン使用者に苦痛を与えるからという人道的配慮。本音は巨額の専売収入の確保と抗日意識を削ぐ事が目的だった。満州国でも同じ政策を日本はとるが、実態は「漸禁」というには程遠いアヘン使用の公認と拡大だった。それでも中国政府はアヘン撲滅のための努力を続け、南京でのアヘン使用は一掃された。それを一変させたのが日中戦争だ。日中戦争こそ真の意味でのアヘン戦争だった。2015/05/14
Eiki Natori
6
アヘンというと、米中の「アヘン戦争」を思い浮かべるが、日本が国ぐるみで中国のアヘンの製造販売を行ない、ボロ儲けしていた件については、あまり知られていない。 日中戦争のもう一つの側面として、もっと知られて良い事実である。 アヘンが不作の時に、三井物産と三菱商事がイランからの輸入に関与していたらしいが、そんな企業が未だに営業させて良いのだろうかと思ってくる。 そんな一冊。2022/02/10
aeg55
6
これまで戦前戦中の本をいくつか読んできたが、なんとなくつながらなかった部分がこの本を読む事によって埋まってきた。盧溝橋事件から華北華中へ侵攻するのだが単なる征服欲などではなく蒙疆、つまりケシの一大生産地を抑えたかったという事なのではないのか。そして興亜院/政権主導のもとアヘンは専売化され軍や警察民間が競ってカネ儲けに邁進した姿が見えてきた。ケシの凶作年にはイランから三井三菱などの財閥が率先し密輸を行い特務機関が輸送をし軍が警備するという有様。まさに盗賊国家であった。2020/08/14