出版社内容情報
『文明論之概略』は,福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり,時代をこえて今日なお,その思想的衝撃力を失わない.敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が,現代の状況を見きわめつつ,あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり,今に語りつぐ.読書会での講義をもとにした書下し.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゃん
15
本書は、『文明論之概略』の第4章「一国人民の智徳を論ず」から第7章「智徳の行はる可き時代と場所とを論ず」までの解説。『文明論之概略』の各章を読んだ後、本書の対応部分を読むようにしている。『文明論之概略』(岩波文庫)の注釈を読んでも分からないところが、本書を読んですっきりすることが多々あり、大変有用。福沢諭吉の当時の時代認識と問題意識を戦後の視点から読むと、また新たな問題意識が生まれるところが本書の面白いところ。下巻へ進む。2017/02/18
かんがく
10
中巻では知徳を論じた4~7章を扱う。道徳論を扱う部分が多く前巻に比べると面白さは劣るものの、引き続き福沢と丸山の凄さを感じた。日本人が話し合いが苦手というのは、明治も昭和も現在も変わらない。2020/04/05
かす
8
主に智と徳について。徳の影響を及ぼす範囲は限られており智の発達により周囲に大きな影響を、との意が自分にささる。社会に影響を与えられる人になってくださいという教授の言葉を思い出す。現代ではSNSで個人の受信・発信力も増し尚のこと智と徳の両方の発達が求められる。衆論と時勢。主張は至極もっともで衆論を発達させる手段が悩ましい。現代で一番影響力があるのはワイドショーでありその内容は視聴者への共感をベースに製作されているように感じられ学べるといえるかは疑問。他方SNSも自分好みの情報が集まりやすい。2020/07/12
あかつや
5
中巻は『概略』の第四章~第七章まで。智とは徳とは、それが社会でどういった意味を持つのかということを扱った部分を解説していく。福沢の偉いのは、何かを論じる前にその論じる所を曖昧なままにせず、しっかりと規定してからはじめることだなあ。そんな福沢の特徴がわかる言葉の使い方とか文章の置き方など、そういう細かい部分もくわしく解説してくれてとても面白い。あと戦前に軍部の検閲で削除された箇所の解説も興味深い。でも当時の軍部の暴走にチクリとやりたいのはわかるが、福沢流に捉えるなら「衆論の非を憂ふ可き」だよなあとも思った。2019/04/08
Tai
4
徳は一身家族まで、定まって動かず、普遍的。智の活動の不断の進歩。影響は全世界に及ぶ。徳を広めるのは聡明叡智、智の力。/人民の間に分賦した智徳の向上が明治維新の遠因である。/生活習慣が可変的なものだ、という前提が大事。福沢は、学問は第一がはなし、次にものごとを見たりきいたり、次には道理を考え、その次に書を読む、としてる。人が集まって合議する習慣をつけたい。/学問とは「物事の互ひに関り合ふ縁を知る」ことだ。/バックル・疑いの心。懐疑なくして探求なく、探求なくして知識はない。/知性の勇気。2020/02/23