出版社内容情報
ヤマメと並ぶ渓流の王者,イワナ.この「幻の魚」の生物としての位置については,これまで長いあいだ激しい論争が続いてきたが,著者は北海道の山野に彼らを追い,その分布や生活史を明らかにして,ついにその実像をつきとめた.大自然の中での孤独な苦闘と興味深い発見を語り,魚たちがくりひろげる野性のドラマへと読者をいざなう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
118
道東根釧原野を流れる河川に生息しているイワナ・オショロコマ・ヤマメ。これらの魚は同一河川に生息していたり、どちらかの種が卓越しているなど、謎に満ちた生息形態を取っていた。その違いは何処から来ているのか?著者はフィールドワークを重ね、その謎を解明した。水槽観察で自然環境と同じく隠れ場所を手に入れたオショロコマのドヤ顔が妙に可愛かったりするのだが、魚は必死なんだろうなあ…と、思わぬでもなし。40年前の本であるため、ゲノム解析とか分子生物学と言う単語は出てこないが、極めて面白い一冊であった。2023/06/13
Ribes triste
4
野外調査のデータの積み重ねとそこから導かれる理論の展開。明解で初心者が読んでも面白い本です。30年近く前に書かれた本ですが、名著です。2015/05/06
R10
3
岩波新書の生物系を集めるきっかけになった本。買ったのは数年前だが、最初読んだときは生態学の話題に付いていけずに途中で読むのをやめてしまった。再度読み始めてからはするする読めて、前回は何だったのかと思うくらい内容に引き込まれた。北海道を舞台に、イワナの謎を追いかけながら生物の営みに触れていく姿は、フィールドワーカー達に共通する興奮を感じる。2016/03/28
misui
3
北海道で見られる赤・白の斑点を持つ二種のイワナに焦点を当て、その種間関係の実態を明らかにしていく。イワナとヤマメの区別もつかない人間にしてみれば、「河川形態」「すみわけ」などの生態学の理論を交えた解説は新鮮で面白かった。著者の叙情的な語り口もいいし、自然の中で人知れず生のドラマが繰り広げられていることが意識されて、不思議に感動する。2010/11/19
Tatuyuki Suzuki
1
イワナってこんなに奥が深いとは知らなかった。2024/07/31