出版社内容情報
四億もの人びとが生活しているインド.極度に貧しい人民の大群をかかえ,きびしい国際関係のなかにおかれているインドは,国内的にも国際的にも多事多難である.日本語教師として三年間ニューデリーに滞在した筆者が,この国のさまざまな階層の社会意識をさぐりながら,明日のインドの進路をたずね,アジアの将来を考える.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ピオリーヌ
14
昭和38年の刊。著者はニューデリーのインド政府国防省外国語学校で日本語教官として、三年と二ヶ月にわたりインドで暮らした。その際、自らの希望もあり月給275ルピー(約二万円)という給料で生活した。当時の在留邦人は少なくとも月に1000ルピーは使っていたとあり、これは驚くべき低い水準での生活となる。著者は、陰部の単語ばかり尋ねてくる校長、事務員の無責任、商人のごまかし、多くの生徒のずうずうしさ、そして圧倒的な貧困に向き合いながらインドとの対話を繰り返し試みていく。所謂進歩的文化人がマルクス主義的発展史観のもと2026/03/31
筑波山
2
1960年代の本らしく、進歩的文化人がインドの現実に当たったときの率直な気持ちが表れている。インド下層階級の狡猾さを憎みつつ、階級的には是認しなければというジレンマをはっきり書いているのがおもしろい。また、インド人民と同じ暮らしをしなければと安い給料で進んでいきながら、当然インド人と同じ暮らしはできず、それに悩んでいる様子は現在の日本人からは考えられない。インドの実情もさることながら、昔の若者の一典型がうかがえる。2009/10/27
さゆう
1
彼にとってインドは心落ち着いて過ごせる居場所だったのだろうか。異文化で暮らす時に、環境が抜群に合う人、積極的に一員となろうとする人、早々に逃げ出す人、タイミングを見失い、居心地の悪さを覚えつつも残り続ける人がいる。そんな中、著者は実際の文化を拒絶しながらも立ち去らない。だからこそ、本書を読んで当時のインドの生活や文化がどのように形成されたかその答えや彼らのロジックは不明瞭であるが、彼はインド文化と一定の距離を置き続けたからこそ、インドの雰囲気が市民との触れ合いを通して、ひしひしと伝わってくる。2026/02/22
MADAKI
1
今から50年以上前、インドの学校で日本語を教えることになった筆者の随筆。文化の違いに戸惑い、自分勝手で適当なことばかり言う周囲のインド人たちにいら立つ筆者の感情が生々しくて引き込まれる。 一方、筆者のインド滞在から半世紀を経て、日本人のインド観は本書に描かれているものとほとんど変わっていないように思う。筆者は鼻持ちならない理想主義の若者なのかもしれないが、我々も同じような見方を共有しているかもしれないと思わされた。
lingo_coffee
1
「大衆による目覚めと封建制度の残滓を穿つ革命こそがインドに本当の自由と平等を齎す」と作者は言う。勿論今の我々にとっては絵空事にしか聴こえないし、著者自身も「左翼の金持ち息子のような気分」と自身のことを腐しているくらいだから、自分が共産革命への賛美するということそのものに青臭さを感じていたと思う。しかしそうだとしても、尚それを叫ばずにはおられない現状が、著者が住んだインドには確かに存在したのだ。悪夢の根源を日が経つごとに個々の具体的なインド人達から封建体制そのものに収斂させていく著者の思考経緯が興味深い。2011/01/15




