出版社内容情報
イギリス経済史家の著者がインドで眼にしたのは,極端な貧富の差,原始的な農業,停滞する工業化など,かつてのイギリスの栄光を支えた植民地経済の残酷な遺産であった.英印関係の経済的側面に歴史的考察を加えつつ,帝国主義と植民地問題を世界市場全体との関連において構造的にとらえようとするユニークな史論.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
27
イギリス植民地時代のインドを舞台とした魅力的な警察小説の舞台背景がもう少し知りたくて本棚から。イギリス経済史の研究者がインドでの現地視察を経て英印の関係を「経済」というベクトルで論じた入門書。インドでの見聞記を盛り込み「情」と「知」の両面から解説してくれるため門外漢でも複雑な経済史を概観できる。75年の論説なので今読んでどうかなと思ったが、「神の信託による劣等人種の統治」という大義・英経済の安全弁としての搾取・零落貴族救済のための植民地勤務政策等、処々腑に落ち小説の舞台を理解する目的としては最適であった。2022/02/03
kanaoka 57
10
イギリス帝国主義とインド統治の姿を垣間見ることができる。インド統治はイギリスにとって極めて都合の良い、重要な富の源泉であり、他方、搾取による荒廃は現代インドにも大きな影を落としている。2018/06/19
ゆき (Kou)
7
恐ろしいほどグロテスクで悪辣で利己的なイギリス帝国を活写している。英国はインドの関税権を管理することによって全く身勝手な貿易を可能にし、自国の産業が不調なときは莫大な関税をインド製品にかける一方で、産業革命後はインドに保護関税を認めずインドの国内産業を崩壊させた。そして市場を蹂躙されたインドは字義通りの「飢餓輸出」を強要される。それらの悪行はヴィクトリア女帝を頂点とする帝国主義と、神により文明化された社会が劣った未開人を保護してやるという「倫理的信託」の2つの教義によって正当化された。2016/08/31
シュークリーム・ヤンキー
3
「限定復刊」の帯につられ、購入。イギリスの支配がいかにインドの経済を衰えさせ、独立後のインドに禍根を残しているかについて、筆者の現地視察での見聞を交えながら論考した本。本書が執筆されたのは1970年代なので、世界システム理論はまだメジャーでなかったと推察する。にも拘わらず本書は、インド植民地を必要としたイギリス経済の脆弱性を指摘していたり、「中心」「周縁」に近い概念に言及していたりするので、その先進性に驚かされる。2020年に読んでも殆ど違和感が無い。2020/05/13
macky
3
☆☆☆☆☆ 岩波新書創刊80年を記念したアンコール復刊。ボス#2から薦められて読了。1975年刊行の古い文献・・・だなんてナメてはいけない。さすが2018年11月時点で37刷!やはり名著。2019/05/14