出版社内容情報
「自由の理念は破壊不可能なものである」。純粋法学の創始者ハンス・ケルゼン(1881-1973)の代表作。相対主義に立つ世界観と現実主義的知性から、議会制民主主義は「自由」の最大化を実現する国家形態であるとして擁護し、絶対的価値の想定にもとづく独裁を批判する。民主主義の危機が切迫した一九二九年刊。
内容説明
「自由の理念は破壊不可能なものである」。純粋法学の創始者ハンス・ケルゼン(1881‐1973)の代表作。相対主義に立つ世界観と現実主義的知性から、議会制民主主義は「自由」の最大化を実現する国家形態であるとして擁護し、絶対的価値の想定にもとづく独裁を批判する。民主主義の危機が切迫した1929年刊。
目次
民主主義の本質と価値(第二版、一九二九年)(自由;国民;議会;議会制改革;職能議会;多数決原理;行政;統治者の選択;形式的民主主義と社会的民主主義;民主主義と世界観)
民主主義の擁護(一九三二年)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
23
昨年の衆議院選挙に対し、「選挙に投票できることは、民主主義だからできることだ」と台湾の学生たちは訴えていた。一方、父は「選挙に投票しないのも民主主義だからこそ、できる自由の一つだ」と言う。今や、政策の実りの実感もなく、議会は政党や議員同士の足の引っ張り合いという茶番劇に成り下がり、国民の政治への失望と無関心を生み出す。だが、国民に関心を持たれなくなった、または政策の結果だけを求め続ける議会制民主主義はやがて国民の「自由」を問わないばかりか、奪うような機関になる危険性もある。それを問うことができるのも国民。2015/02/03
シローキイ
18
民主主義とはどのようなものであるのか、そしてどのようであるべきなのか。私達は無意識に或いは上辺だけの民主主義並びに民主的な精神を知っているだけだとこの本を見て感じた。それに代表の選び方ももっと慎重にならなければならないとも。2018/05/30
りん
16
民主主義という言葉は理念と現実の間にあまりに多くのグラデーションがあり、時に都合よく使われたりしているが、本書は自由の概念から出発し、民主主義と自由の内在的な緊張関係、民主主義の本質と価値を敷衍している。理念と現実の側面をうまく観察、分析していて、論の運びも素晴らしい。とても濃密でおすすめです。 2019/05/28
Kei
15
ちょっと時間を空けて読むことになったので、繋がりが忘れかけていたが、著者の主張は非常にクリアで整合的。結局民主主義や社会民主主義、資本主義等、その国にあったやり方を自信を持って追求していくしかないのではと思う。2016/08/12
まさにい
13
ケルゼンについては憲法の教科書で名前が出てきたなぁという程度しか知らなかった。しかし、いやぁ~この本素晴らしく含蓄のある本である。大学時代に読んでおきたかった。なんせ、日本国憲法の現在言われている民主主義に関する内容は、この本を種本としているみたいなのだ。この本の秀逸なところは翻訳者の解説である。特にケルゼンの生涯概略の部分は何か悲しい。時代に抗えながら学問を追及してきた者の定めなのかもしれない。2021/07/11
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- 幻影空路 角川文庫