出版社内容情報
動乱が続く時代のさなか、狭い谷あいに数百年生きのびた小さな荘園、若狭国太良荘。争い合う支配者やたくましく生きる百姓ら、多くの「名もしれぬ人々」の小さくも壮大な歴史を、熱をおびた筆で克明に描く。徹底した史料調査から「歴史を動かす力」に肉迫し、今なお高く評価される、著者の研究の原点。(解説=清水克行)
内容説明
動乱が続く時代のさなか、狭い谷あいに数百年生きのびた小さな荘園、若狭国太良荘。互いに争い続ける支配者たちやたくましく生きる百姓ら、多くの名もしれぬ人々が積み重ねた壮大な歴史を、熱をおびた筆で克明に描く。徹底した史料調査から、歴史を動かす力に肉迫し、今なお高く評価される、著者の研究の原点。
目次
第1章 形成期の荘園(出羽房雲厳―開発領主;菩提院行遍―荘園所有者;真行房定宴―荘園経営者)
第2章 発展期の荘園(領主名をめぐって;百姓名をめぐって;荘務権をめぐって;南北朝の動乱)
第3章 停滞期の荘園(一色氏の支配;武田氏の支配)
終章 崩壊期の荘園
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まえぞう
21
荘園公領制の提唱者である網野先生が、若狭国の太良荘について、領家たる東寺に残された古文書を読み解きながら、中世荘園の実態に迫ります。個々の出来事は煩雑に流れますが、私の興味がある職の体系の理解の助けになりました。特に農地を巡る職の体系のうち、経済的な利権部分だけが残り、任命、被任命の関係が崩れていくことが、近世の農村を用意したという話しは合点がいきました。2024/02/05
Fumoh
3
若狭の国、太良荘(たらのしょう)が鎌倉から戦国にかけて歩んだ歴史を、非常に細かく紐解いていく異例の書。中世の荘園の様子を、出納帳やら権利の移り行きやらまで、非常に細かく見ていく。中世の領地経営の知識が相当ないと、読み解くことは難しいが、著者の描く太良荘の出来事は、まるで壮大な大河ドラマのように、波乱万丈としている。名主職の取り合い、農民の自由や夢、時の政権による混乱の影響など、さまざまなドラマがあった。その一つ一つをわたしの知識不足のゆえに追っていくことが困難なのが口惜しいが、いずれ再読したい一冊である。2023/12/30