出版社内容情報
伊藤博文,大隈重信,原敬,犬養毅,そして西園寺公望.五人の性格と行動を跡づけた伝記的エッセイ.(解説=松浦正孝)
内容説明
初代首相・伊藤博文、「民衆政治家」大隈重信、「平民宰相」原敬、挫折の政治家・犬養毅、最後の元老・西園寺公望―。五人の政治家の性格は、それぞれの運命のなかでどのような光を放ったのか。岡史学の精髄を伝える珠玉の伝記的エッセイ。
目次
初代首相・伊藤博文(その若き日;天皇制の定礎 ほか)
「民衆政治家」大隈重信(盛大を極めた「国民葬」;燦めく運命の星 ほか)
「平民宰相」原敬(「白河以北一山百文」;彷徨の後に ほか)
挫折の政治家・犬養毅(奇しき偶然;東洋趣味 ほか)
最後の元老・西園寺公望(風雲の中で;若き日のパリ ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
politics
6
伊藤博文・大隈重信ら五人の近代日本の政治指導者の伝記。各政治家の政治的な履歴を一瞥しながらその性格や私生活での行状などもふんだんに盛り込みながら描かれる。原と大隈の評価が少し似通った内容など不満はあるものの、全体として優れた伝記ものになっているものと思われる。また松浦氏の解説も御進講時の草稿などからいかにして本書が出来上がったのかを丹念に迫っており、陸奥宗光に岡が興味を持っていた点など、削られた部分も大変魅力的なことが分かった。2022/08/29
若黎
6
積読していたがようやく読了。西園寺公望さんに興味があって買ったが、印象に残ったのは伊藤博文さんだった。明治天皇に忠誠を尽くす、公と私は分ける。至極真っ当に日本のことを考えていた政治家だったのだろう、と思う。で、当初目的の西園寺公は政友会総裁も首相もやる気ナシナシな感じだったが、元老としては政党政治を守ろうとしていた模様。ではなぜ政友会総裁や首相時に、もっとなんとかしようと思わなかったのであろうか。私の理解不足だろうが、よくわからない部分だった。2021/04/17
穀雨
5
5人の政治家の列伝という形式だが、各人の経歴については必要最小限に留める一方、その人柄を示すエピソードに多くの紙幅が割かれている。一人目の伊藤博文などは特にそれが顕著で、冒頭の4ページほどでその生涯をサラッとまとめたあとはひたすら趣味や嗜好の話が続く。それによって教科書などではうかがい知ることのできない人間味ある一面が現れ、より読み応えのある出来に仕上がっていると思った。また、各人に対する著者の好悪の感情が、作中で比較的はっきり現れているのも印象に残った。2021/07/09
flat
5
戦後日本の代表的な政治家達の個人プロフィールも含めた講評とでも呼べば良いのかな?皆、魅力的でありながら短期間でもって日本の近代化を成し遂げたのは長期的な構想をもって政治にあたれたからなのだろうと思う。やはり伊藤博文の暗殺は日本にとって負の意味で大きな影響を与えたのだろう。惜しまずにはいられない。2019/12/30
バルジ
3
伊藤博文を始めとする近代日本の5名の政治を語る伝記。各政治家の個性や識見を語りつつ、近代日本の抱えた政治的な問題点を各5名に仮託してその章を終える。本書における著者の政治家評は時に辛辣なものある。ことに大隈重信や原敬といった政党を基盤とした政治指導者にはその機会主義的な側面と冷淡な大衆観に鋭く切り込む。一方著者にとっては同時代の人物として余り好んでいはいないであろうこれら「近代日本の政治家」への眼差しは決して嫌悪だけではない。時に家庭的なエピソードを折込ながら総体として「政治家」の姿を描いている。2022/01/30