出版社内容情報
「君ほどは白からず……」──ジョゼフは白い肌に赤毛の十八歳。人の心を騒がす美貌ながら、極度の潔癖さと信仰心ゆえに学生らしい気軽な会話を嫌悪し、好意を示す人たちと事あるたびに衝突する。孤独の中で、夢想にふける彼の前に運命の少女モイラが現れ……。一九二〇年のヴァージニアを舞台に、端正な文章で綴るグリーンの代表作。
内容説明
「君ほどは白からず…」―ジョゼフは白い肌に赤毛の18歳。人の心を騒がす美貌ながら、極度の潔癖さと信仰心ゆえに若者らしい気軽な会話を嫌悪し、好意を示す人たちと事あるごとに衝突する。孤独の中で、夢想にふける彼の前に運命の少女が現れ…。1920年のヴァージニアを舞台に、端正な文章で綴るグリーンの代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
33
赤毛の美少年ジョゼフ・デイは、大学進学のため下宿生活を始めるが、潔癖な心と篤い信仰心のために、同級生達の下世話な会話に嫌悪し馴染めずにいた。それでも、篤い信仰心を持った同級生デイヴィッドと出会い、友情を深めることで大学生活を送っていたが、下宿先の女主人の養女モイラが現れ、ジョゼフの人生が狂っていく。『モイラ』は主人公ジョゼフと表題の女性モイラとの関係よりも、ジョゼフの少年から大人への成長過程における心の葛藤と痛みが細部に渡って丁寧に描かれている。(続く)2023/06/04
松本直哉
26
実際にモイラが登場するのは終り近くに過ぎないが、その存在はすでに早くから言及され暗示され、それはあたかも、見たくなくて目をそらしてもどうしても視野に入る不都合な現実、またモイラの語源が運命であることを考えれば不可避の陥穽のようでもある。主人公ジョゼフの、肉的なものへの嫌悪と霊的なものへの憧れ、陥穽を避けようとしてついに避けられない運命は、その純粋さのゆえに級友に嘲笑されるが、聖書をまじめに読めば彼のような現世否定は理解できるし、肉欲と信仰を二重基準で同居させる大多数の信者の方がむしろ異常とさえ言えよう。2024/09/28
amanon
9
約二十年ぶりに新訳にて再読。初読の際、殆どキリスト教に無知だったのにも関わらず、よく最後まで読めたな…というのが正直なところ(笑)。また、初読の際も、主人公ジョセフの頑なな性格はある程度認識していたつもりだったが、改めて読むと、極端なまでの潔癖な性格と、その性格が引き起こす様々な軋轢、それでもなぜか人を惹きつけるというか、構いたくさせる何かがあるという人物設定に驚き。またタイトルにもなっているモイラが、実はごく終盤の、しかも比較的僅かな場面にしか登場しないのにも関わらず、強烈な印象を残すのは驚異の域。2023/06/04
zunzun
5
ジュリアン・グリーンによってかかれた作品。 個人的には名作である。キリスト教徒である十八歳の主人公ジョゼフ・デイという童貞が田舎から大学に入学、 下宿や大学でであう人々と偏頗な交際を続け、最後に破綻してしまうという物語。 この破綻という結末をみたとき、私は「純文学ってこれだよなあ。大衆文学とはちがう」とおもった。 交際といったが彼には同じ信者であるデイヴィッドしか付き合いはなく、他は《心の中で「ほかの連中」と呼んでいる面々》 と記されているように軽蔑している存在であった。2024/08/22
sugsyu
1
信仰と情欲のせめぎ合いに苦しむ若者の悲劇。両者が対立するものとしうよりは、同じものの両面であるというカラマーゾフ的な矛盾!(もっともプロット自体は「白痴」に類似するが)。「ロミオとジュリエット」に激怒して教科書を破り捨てる一方で、穏健なプロテスタントにも馴染めず原始キリスト教に憧れる。彼の周りに立ち現れる同性たちの友情、愛情に目を背け、真っ逆さまに「運命の女(モイラ)」へと突き進む。戯れに部屋を訪れた彼女の前で、平静を装って「オセロー」を読む場面の緊迫感たるや。偉大な人間の失墜は、宗教さえ超えて胸を撃つ。2023/11/24
-
- 和書
- グッド・ヘルス・ガイド