出版社内容情報
第一次大戦さなかのパリで,変貌する人びと社会.それを見つめる語り手は,文学についての啓示を得る.(全14冊)
凡 例
『失われた時を求めて』の全巻構成
本巻について
本巻の主な登場人物
地図(一九一〇年前後のフランスとその周辺/一九一〇年前後のパリ)
第七篇 見出された時 ?
場面索引
訳者あとがき(十三)
プレイヤッド版との異同一覧
図版一覧
【『失われた時を求めて』の全巻構成】
第一篇 スワン家のほうへ
コンブレー(以上,本文庫第一巻)
スワンの恋
土地の名─名(以上,第二巻)
第二篇 花咲く乙女たちのかげに
スワン夫人をめぐって(以上,第三巻)
土地の名─土地(以上,第四巻)
第三篇 ゲルマントのほう
一
二(以上,第五,六,七巻)
第四篇 ソドムとゴモラ
一
二(以上,第八,九巻)
第五篇 囚われの女(以上,第一〇,一一巻)
第六篇 消え去ったアルベルチーヌ(以上,第一二巻)
第七篇 見出された時(以上,第一三,一四巻)n
プルースト[プルースト]
著・文・その他
吉川 一義[ヨシカワ カズヨシ]
翻訳
内容説明
幼年時代の秘密を明かすタンソンヴィル再訪。数年後、第一次大戦さなかのパリでも時代の変貌は容赦ない。新興サロンの台頭、サン=ルーの出征、「破廉恥の殿堂」での一夜…。過去と現在、夢と現実が乖離し混淆するなか、文学についての啓示が「私」に訪れる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
176
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、ラス前第13巻『見出された時Ⅰ』、愈々ラスト1冊まで来ました。本巻は『フランス貴族の退廃&没落、宴の後』の巻でした。続いて最終巻『見出された時Ⅱ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。2020/02/21
lily
153
私の恋の葛藤は一旦片隅に置いて、戦争論、芸術、文学論へと意識は益々深い森の中へと彷徨う。そしてまた私の内面と全てがシンクロする。真の人生、ついに発見され解明された人生、それゆえ本当に生きたといえる唯一の人生、それが文学である。真実を学ぶには苦しまなければならないほど出来が悪くても。例えば女の発掘に長けているのが嫉妬だとしても...文学を愛する人間で、プルーストに出逢えてよかった。再読を何回重ねても飽くことなく、その都度溢れるほどの新たな発見があるだろう。文学の世界一周旅行をしてるような絢爛を極めている。2019/08/27
藤月はな(灯れ松明の火)
90
『失われた時を求めて』も最終章に差し掛かりました。戦争によって知っている人がどんどん、いなくなっていく事に寂しさを覚えます。また、見聞したことで一瞬でクルリと変わる人物の見方は実に普遍的。そして生活から離れ、内省に至る時に見出した文学論はまさに白眉だ。当時は自分を惑乱させ、一大事だった出来事も感情も想いも時の流れとともに微かなものと化し、いつかは忘れ去られていく。だけど、ラスト一文が私には無性に悲しく、思えた。2019/02/12
のっち♬
75
大半が戦中のパリを舞台とし、登場人物たちを担い手として戦争をめぐる様々な言説が綴られる。中でも著者の思想を色濃く投影したシャルリュス男爵の時流に乗らない論理的な言説が際立ち、彼が娼館で鞭打たれる場面も生々しくて強烈。一方で、新聞記事を誇張して吹聴する人間の愚かさを風刺するのも忘れない。「文学作品の素材はことごとく私の過去の人生にある」—芸術過食症になりがちな今こそ、記憶からエッセンスを、印象から想念を見出して、暗闇と沈黙の中から真正な書物を生み出そう。人生は文学、誰もが自分自身の作者で翻訳者で読者なのだ。2020/11/02
燃えつきた棒
56
この巻では、戦争が描かれる。アルベルチーヌを失った「私」は、熱病から覚めた人の目で、登場人物たちそれぞれの戦争を視つめる。 自分から戦争に飛び込んで、雄々しく戦うサン=ルー、なんとかして兵役から逃れようと必死で画策する者、周囲の目が戦争一辺倒になっているのを幸に、自らの悪癖に耽溺するシャルリュス、戦争アイテムを巧みに取り込んで、相も変わらずサロンでの夜会に興じるヴェルデュラン夫人。 この辺りの描写は、カミュの「ペスト」を想起させる。 2020/02/12