出版社内容情報
フランス社会の書記として、社会の全体を写し取る――長短九十の小説から成る「人間喜劇」の壮大な構想を、作家みずから述べた「総序」は、近代文学の重要なマニフェスト。その詩的応用編として、『金色の眼の娘』を併収。植民地生まれの美少女と非情な伊達男の恋は、黄金と快楽、人種と性の交差の中でどこへ向かうのか?
内容説明
十九世紀フランス社会全体を写し取るバルザックの「人間喜劇」。壮大な構想を作家自ら述べた「総序」は近代文学の方法論としても重要なマニフェスト。その詩的応用編として、植民地生まれの美少女とパリ随一の非情な伊達男の恋物語『金色の眼の娘』を併収する。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テイネハイランド
18
図書館本。「人間喜劇」総序と中編小説「金色の眼の娘」が収録されています。前に読んだ岩波文庫版「サラジーヌ」でも思いましたが、本書もバルザック研究者である訳者による注が詳細かつ丁寧にされていて、注を読むのも本書の楽しみのうちに入るのではないでしょうか。「金色の眼の娘」自体は、訳者がいうように「通俗的なオリエンタリズムあるいは東洋趣味の原色絵具をこてこてに厚塗りして描き上げた絵画と言えそうな中編小説」で、小説そのものの面白さの点では「人間喜劇」作品群の中だと大したことがないかなという印象です。2024/08/14
tyfk
8
「「総序」の次に『金色の眼の娘』の三つの章を置くと、全体は起承転結のある四部構成の読み物になりはしないか」p.2472024/08/18
Fumoh
5
バルザックの「人間喜劇」は人物再登場の手法を用いて、19世紀の(恐らく)七月王政期(1830~1848)のパリ風俗を横断的に描いた作品群です。喜劇とはいいますが、今でいうお笑いではなくて、悲劇的特色のない、自由な形式の作品ということだと思います(悲劇はお決まりの制約がある)。で、このバルザックは当時のフランス文学発展期において、ロマン派とは(一部相乗りしながらも)一線を画する形で、「社会・風俗」そのものを合理的・写実的な側面から描写するという試みを行いました。それについての所信表明演説のようなものが、この2025/03/04
Decoy
4
「総序」だけで文庫化とは、ありがたい。バルザックならではの力の入り具合に、早くも圧倒される。『金色の眼の娘』の方は、展開が速過ぎで、しかもラストが予想だにしない陰惨さで、「?!?!」ってなった…。『人間喜劇』を、死ぬまでにすべて読んでみたい(ようやく1割)。2024/08/12
NAGISAN
3
『人間喜劇』は読んでいないけれど、1840年代の刊行時の時代・人物、作品の背景がわかるし、楽しく読める。新訳で読みたいが、今の出版環境からみて難しいでしょうね。 「挿絵の説明」、校正の際に逝去された西川祐子先生の「訳注」「訳者あとがき」がよい。女性学の先生とばかり思っていました。合掌。2024/10/17