出版社内容情報
雨の夜に突如、姿を消した浮舟。入水かとの報を聞き、薫と匂宮はそれぞれに悲しみに暮れる。だが浮舟は、横川僧都の一行に救われていた。自らの素性をひた隠しにしつつ、ひたすら出家を願い、ついに髪を下ろす浮舟。そこに、噂を聞いた薫からの文が届く--。蜻蛉から夢浮橋まで、全五十四帖完結。年立や索引も収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
67
蜻蛉から夢浮橋まで。薫と匂宮との間で揺れ動き、思い悩みついには入水を決意する浮舟。一方の薫は、浮舟に執着しながらも、垣間見た女一の宮に心を動かす。薫は内省的だが、どこまでも自己中心的だ。権力のある男に見初められないかぎり幸せはないとされた女性と、女性を自分の思い通りにできると思っている権力を持った男。同じ権力者で、同じような境遇でありながら、光源氏と薫は、どうしてこうも違うのだろう。2021/12/31
藤月はな(灯れ松明の火)
67
源氏物語、完結。浮舟入水と死の仄めかしを知り、嘆き悲しむ匂宮に対し、浮舟に執心していた薫は女一宮へ心動かされる事に開いた口が塞がらない。ここは両者の印象がガラリと変わる部分だと思います。また、周囲は浮舟が高雅な身分の男性(薫・匂宮)に想いを寄せられていた事に対し、一目置きます。しかし、彼女にとってはそれは不幸だった。昏睡状態での「川に流してよ」のうわ言が痛ましい。そして出家しても浮舟の苦悩は続く。母に一目でも逢いたいと願う彼女へ異母弟の小君を還俗を求める書と共に送る薫にドン引き。お前、そういう所だぞ・・・2021/10/04
金吾
32
読了した時に満足感と満腹感があります。薫には最後まで感情移入が出来ませんでしたが、それぞれの人物の描写はすごく、平安時代にこのような小説を書いた紫式部に感服いたします。またどなたかが六条御息所が理想の女性と言っていたのを読んだ時に理解できませんでしたが、今回一気読みして少し御息所を理解できたような気がしました。2024/01/05
tsu55
23
蜻蛉から浮橋まで。巻末に年立、作中若一覧、作中人物索引など。 心の隙間をを埋めるために次々と女を求める薫と、男たちに振り回され、思うように自分の生を生きることができない浮舟。小君に託した手紙の受け取りを拒否された薫が途方に暮れる場面で物語が終わっているのが印象的。2021/10/07
はちめ
14
5年越しで全巻読了したので感慨深い。ただ、読了と言ってもほぼ解説を読んだようなものだが。源氏物語は素人には難しいが宇治十帖は比較的読みやすい。特にかげろうの巻などは近代小説のような動きのある描写で、そのまま映画化できると思う。 登場人物については、夢の浮橋で再度登場する薫のグダグダ感が嫌になる。源氏物語はここで終わるが、紫式部はこの後の展開をどのように考えていたのだろうか?このまま進めば薫と匂宮のグダグダと浮舟の主体性のなさに行くしかないように思うのだが。仏教の力はどこまで影響できただろうか?☆☆☆☆☆2021/12/09