出版社内容情報
家事などの人間の本来的な諸活動は、市場経済を支える無払いの労働〈シャドウ・ワーク〉へと変質している。人間がシステムの従属変数となっている危機を、経済、社会、政治、知的活動などさまざまな切り口から論じ、自立・自存した生の回復を唱える。文明批評家イリイチによる現代産業社会への挑戦と警告。
内容説明
家事などの人間の本来的な諸活動は、市場経済を支える無払いの労働“シャドウ・ワーク”へと変質している。人間がシステムの従属変数となっている危機を、経済、社会、政治、知的活動などさまざまな切り口から論じ、自立・自存した生の回復を唱える。文明批評家イリイチによる現代産業社会への挑戦と警告。
目次
1 平和とは人間の生き方
2 公的選択の三つの次元
3 ヴァナキュラーな価値
4 人間生活の自立と自存にしかけられた戦争
5 生き生きとした共生を求めて―民衆による探究行為
6 シャドウ・ワーク
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
91
「シャドウ・エコノミー」という言葉を作り出した著者が、その概念について「シャドウ・ワーク」ということについてかなり詳しく説明してくれています。経済史を絡めての説明ですが、このような概念があって賃労働を補完して生活の自立を取り去るものであるということを解説してくれていることには一つの意義があるという気がしました。2024/02/14
藤月はな(灯れ松明の火)
60
生活や娯楽が、市場での消費に組み込まれる資本主義社会。そこにおいて男性は消費する賃金を得る為に会社に魂を売り、女性は無償の家事・教育・介護などを一任されるしかない。そのように人間は資本主義社会に内包する形で隷属されている事を指摘したイリイチ。只、電気や機械の恩恵がある中で最早、自立した自然に返る事は不可能である。その上、家事・介護も家事代行やヘルパーという、賃金が支払われるという形での職が組み込まれる事によって一部の人間の社会活動が可能になるという現実がある。2024/01/24
壱萬参仟縁
50
エフ文庫より。平和とは輸出できない。移転されると、必ずだめになる(33頁)。開発とは、生活の自立と自存を志向する文化を変化させ一つの経済システムへ統合させる。画一的な経済領域を拡大させる(41頁)。大きな声で読むという慣習は社会的効果をもたらす(121頁)。ヴァナキュラーとは、根付いている、居住。ラテン語だとvernaculum。自家製を意味する(144頁)。専業主婦ってのは、この本読んでも、女性の自立、男女平等に反するとつくづく思う。2024/09/20
きゃれら
16
岩波文庫フェア名著・名作再発見で、発見した1冊。スミス、マルクス、あるいはケインズを読んでいて、家事労働はどう考えればいいのか悩んでいた自分にぴったりの本と思った。経済学中心なのかと思ったら、社会史、哲学史、思想史の本で、資本主義はもとよりマルクス主義、フェミニズムまで根本の根本から問い直すとんでもない重さの本だった。難しくてめちゃくちゃ時間がかかったが、読み通した甲斐はあったと思う。理解は6割くらいだけど。モノを考えるとき賃労働を中心に考えてしまうことそのものが、毒されているとは気づかなかったなあ。2025/06/19
Fumoh
8
表題の「シャドウワーク」という概念からすると、無払いの奉仕労働(家事など)についての問題提起の論のように思えるが、全体的には、極資本主義イデオロギーに対する批判の書となっている。これは主に20世紀末のアメリカに向けられたものだと思える。資本主義とは無限の開発成長思想であるとも言えるが、そのような「無限開発」など、どこにもなく、ただ既存のものを「自己流に破壊」して作り変えることを「開発・成長」と見なしているに過ぎない。さすがに現代からすれば、いささか「当時の書」という感じが拭えないが、改めて資本主義の限界を2024/01/01
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- 和書
- プシュケの涙 電撃文庫