出版社内容情報
19世紀稀代の革命家ブランキ(1805-1881)は,パリ・コミューン勃発の前日に逮捕される.トーロー要塞幽閉中に書かれた最後の著作が本書である.それは革命論ではなく,宇宙の無限から人間を考察したものだった.想像力を広大な宇宙に飛翔させ,そこでブランキが見たものは
内容説明
19世紀稀代の革命家ブランキ(1805‐1881)は、パリ・コミューン勃発の前日に逮捕される。トーロー要塞幽閉中に書かれた最後の著作が本書である。それは革命論ではなく、宇宙の無限から人間を考察したものだった。想像力を広大な宇宙に飛翔させ、そこでブランキが見たものは?ベンヤミンを震撼させたペシミズムの深淵。
目次
1 宇宙―無限
2 無際限
3 星々との限りない距離
4 天体の物理的組成
5 ラプラスの宇宙生成論に対する所見―彗星
6 世界の起源
7 宇宙の分析と総合
8 エピローグ
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
96
図書館で「宇宙の成り立ちについての本かな?」と気安く、手に取る。しかし、読むと戸惑った。『虐殺器官』において、ワーグナーの音楽が持つ昂揚性についての文章を思い出すようなリズムが感じられたからだ。そしてエピローグでの宇宙の互いが呼応して無限に誕生するのに対し、人間の営みの儚さや懲りない繰り返しへの分類できない感情が混じった叫びの力強さが妙に心に残った。後で訳者解説を読んで絶句。作者は先鋭的な革命家で当時のフランス政権から危険視され、人生の大半を投獄、移送、脱獄、逃亡の繰り返し、という人生を送ってきたからだ。2019/05/07
またの名
18
「とんでもない気狂いが病院から直通で来やがったぞ!」と非難されることを予測するブランキの論述は、確かにとんでもない。物質を構成する元素が有限なのに対し宇宙と宇宙が含む物質が無限にあるなら、限りある原型の組合わせを無数に生成することで全ての存在物が常に既に原型のコピーの反復として無限に分身を持つ、と情熱的に書き進める革命家。ニーチェの永遠回帰と違い、同じものだけが繰り返すのではなく、無限の素材をもとにして起きる全ての出来事が選び得たあらゆる分岐の変種も創造でき、さらに各々が複製される無限×無限のヴィジョン。2017/11/02
壱萬弐仟縁
14
1872年初出。先のコペルニクスの本と違い、新字体だけで敷居は下がる。「宇宙は、時間的、空間的に無限」(7頁)。秒速7万5000里の光も太陽系空間横断に10年3か月(16頁)。ラプラス説の検討で求心力と遠心力(52頁)。ラプラスは星雲変化は唱えるも、起源は不明(55頁)。「見すぼらしかろうと、輝かしかろうと、形ある一切のものは、つかのまの生命であり、やがて滅びゆく運命にある」(59頁)。方丈記や徒然草の如し。「星の化合物の 多様性(傍点) にもかかわらず、物質は 無限(傍点) へ到達できない」(92頁)。2013/11/02
misui
11
ベンヤミンからの流れで読んだ。一九世紀、その生涯の大半を牢獄に過ごした革命家・ブランキによる宇宙論。物質の有限と時間の無限を前提にし、無限の中で物質が組成されるなら膨大な数のオリジナル世界が存在する、そして時間の繰り返しによってそのコピー世界は無限に連なる…という論旨。一読してわかるようにニーチェの永劫回帰と似た発想で、今で言う多世界解釈のはしりなのだろう。2013/07/01
ラウリスタ~
10
なにやらポーのユリイカを思わせる変な本。本人はものすごい本を書いたと思ってるけど、周囲はなんだこれ?って思うパターン。天文学に関する学術的な本の振りしてるけど、当然ブランキさんは素人だから、そんなの書けるわけがない。19世紀って素人でも見よう見まねで科学読み物を書けると思ってたんだろうね。それでも、訳者は、そしてベンヤミンとかは、この本に価値を見出す。確かに永遠回帰らしきことは言っているし、ニーチェを思わせることもなくはない。でも、解説を読まないとさっぱり。2012/12/16