出版社内容情報
カール・シュミット[カール・シュミット]
著・文・その他
権左 武志[ゴンザ タケシ]
翻訳
内容説明
政治的なものの本質を「味方と敵の区別」に見出したカール・シュミット(1888‐1985)の代表作。1932年版と33年版を全訳し、各版での修正箇所を示すことで、初出論文である27年版からの変化をたどれるように編集。さらに63年版の序文や補遺等も収録した。行き届いた訳文と解説によって、「第三帝国の桂冠法学者」の知的軌跡が浮かび上がる。
目次
政治的なものの概念(一九三二年版)(国家的と政治的;政治的なものの基準としての味方と敵の区別;敵対関係の現象形態としての戦争;政治的統一の形式としての国家、多元主義による疑問視;戦争と敵に関する決定 ほか)
政治的なものの概念(一九三三年版)(政治的なものの基準としての味方と敵の区別;敵対関係の現象形態としての戦争;続;政治的統一の形式としての国家、多元主義による疑問視;戦争と敵に関する決定 ほか)
政治的なものの概念(一九六三年版)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
46
本書とウェーバーの「職業としての政治」は読んで損はないと思います。シュミットは政治的な決定には非客観性が付き物だし、政治的な行為や動機は敵と味方という区別に帰結されると喝破しますがまさにその通りだと思います。そして、その敵と味方の区別は決して道徳的な基準などで決められているわけでもない。道徳的な悪を備えているとしても政治の上では味方になる場合もあるわけです。注意しなければいけないのはシュミットは自由主義批判を展開しているということ。しかし、自由主義が政治的統一を阻んでいるというのは否定のできない事実です。2023/04/29
かわうそ
37
『戦争を妨げる意志が、戦争そのものをもはや恐れないほど強いならば、この意志は、同様に政治的動機となっている。すなわち、戦争反対の意志は、極端な場合にすぎないとしても、戦争と戦争の意味すらも肯定している。現在では、これは、とりわけ有望な種類の戦争の正当化であるように見える。その場合、戦争は、その都度「人類最後の最終的戦争」の形で演じられる。』34.35 シュミットが自由主義国家や自由主義を嫌悪していることは明白である。自由主義の対抗処置たるナチスを支持したと考えればその態度は一貫していると言えるだろう。2025/02/12
田氏
22
道徳は善と悪を区別し、経済は有理と有害を区別する。では政治は何を区別するか?味方と敵とをだ。その区別が政治的なものの本質だとして展開する論理。その中には苛烈な自由思想批判も含まれる。さて、今日の我々はとりあえずその自由思想の潮流を暮らしているわけだ(よね?)が、そのことがシュミットからの批判に対する勝利の証拠だとは、自分には思えない節がある。批判を退けるのに成功したのではなく、批判対象をないことにし続けているのではないか。そのような懐疑には多分、シュミットが試みたような、道徳等と政治との分離が必要なのだ。2022/09/19
Ex libris 毒餃子
15
露骨にナチズムに傾いた修正がかかっているのがわかり、良い一冊。政治的なものが公的な敵と味方に分けるものだという理論。政治が取り扱うべき概念は突き詰めるとこうなる、とは一理あると思うが、私はこれを読んだ結果、概念的なものよりも実践としてどうあるべきか、にどうしても興味関心がいく。2024/01/13
逆丸カツハ
9
非常に深い人間の業が論じられていると思う。嫌な気分にならざるをえなかった。このような敵対関係の中で奪い合う利益もそのような業そのものだと思う。この認識には実存的に敵対関係があるという現在しかなく、ひいては認識とそこから生まれる行動自体が敵対関係を再生産する類のものだろう。しかし、そこに一応の出口の可能性は記されている。寧ろ自分が追求すべきは業を避けるのではなく、それに深く踏み込んだうえで解消するような道ではないかと思った。読んだ価値はあったと思う。2023/09/03