出版社内容情報
歴史家としてのマキアヴェッリの代表作.このフィレンツェ都市国家の建設からロレンツオ・デ・メディチの死までの政治史の正確な叙述は,近代史学の発達に大きな寄与をなした.貴族,市民,平民の抗争を生きいきと描きつつ,法王制がイタリアの政治統一をいかに阻害したかを鋭く指摘,市民による国家統一を強調している.
内容説明
絶え間なく繰り広げられる複雑な権力闘争。苛烈な現実政治の現場に身を置いた著者が、メディチ家支配下の共和制フィレンツェに焦点をすえながら、波瀾に満ちたフィレンツェの歴史を具体的に叙述していく。叙述される出来事自体の面白さだけでなく、第一級の知性たるマキァヴェッリの歴史認識を知るうえでも興味はつきない。
目次
第5巻(コジモ・デ・メディチの流刑地よりの帰還からアンギアーリの戦いまで、一四三四‐一四四〇年)
第6巻(イタリアの概況。アルフォンソ一世没後のナポリ継承戦争まで、一四四〇‐一四六二年)
第7巻(コジモからピエロの息子たちにいたるまでのフィレンツェにおけるメディチ家の覇権、一四六二‐一四七八年)
第8巻(パッツィ家の陰謀から偉大なるロレンツォ・デ・メディチの死まで、一四七八‐一四九二年)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Masa03
3
時代のダイナミズムが透けて見える。 上巻に続き、無職のマキァヴェッリが教皇クレメンスに向けたエントリーシートなわけだが、書かれた時代が問題。 共和政というより、民主政か衆愚政治に近しい混乱から、類まれなヴィルトゥを持つ偉人たちによってもたらされる平安まで容易に揺れ動くフィレンツェ。 混乱への嫌気と、周到なメディチ家の打ち手によって、揺り戻しはあるにせよ、後のトスカーナ大公国へと徐々に引き寄せられていく都市国家を、冷徹な観察眼で描写した書。 プリンチペやディスコルシよりは面白みはないが、なかなかの良書。2019/04/02
あくび虫
3
これはもう小説ですね。下巻は終始、メディチ家の有名人たちが出ずっぱり。だから、上巻よりも親しみやすく、面白いです。私的には長台詞が好き。――複雑すぎて、詳細は入ってこないです。土地の帰属は二転三転、政体もばらばら、人間関係は複雑怪奇。しかも変化が速すぎる。極めつけに、同名の人物が大量発生しています。――そのわりに、あっさりと読めるのは不思議なところ。うまい下手という問題ではなく、魅力のある文です。2017/02/20
壱萬参仟縁
3
第6巻第1章には、戦争の目的について簡潔だが重要なことが冒頭に書いてある。勝利を手にしたのに貧しくなったり、得たもののせいで弱くなるのなら、停戦し、当初の戦争目的を完遂できない(131頁)。ならばフィレンツェ史から日本史を照射すれば、戦わなくて済んだ戦争もあったのではないかと思えてきた。本章の末尾にも意味深なことが書いてある。敗者は立ち直る時間をもち、勝者は勝利の成果を手にする時間をもたない(133頁)。そうなのだな。負けて(学位取らずに)、自由時間はたっぷりあるな。貧しいが。伊国教訓を日本の創造都市へ。2013/04/05
Fumoh
2
下巻は、マキャヴェリが生きていた時代に近づいてきて、話題もフィレンツェ内の権力闘争史といった感じになってくる。フィレンツェ共和国の外交が失敗続きで、影響力を持ち続けられないのは、実力のあるリーダーがおらず、お互い疑心悪鬼になって政局が読めないせいだと述べているが、実際わたしはあの群雄割拠のイタリアの中心で、安易な貴族制とならず、共和国を保っただけでも大変なものだと感じる。メディチ家の勃興とパッツィ事件、ロレンツォ・ディ・メディチの登場とルネサンス期に入って、さらに濃密な描写になっていくが、全体として、2024/01/24
CCC
2
なんかずっと抗争してんな、と他人事として読んでたらそんな感じ。まったく息が休まる暇がない。2014/10/27