出版社内容情報
人間の自由と権利を保障するための法律は,イギリスのマグナ・カルタを始祖とするが,今日では各国の成文憲法中に必ず人権宣言が含まれている.本書は歴史上ならびに現在の代表的人権宣言四十四種にそれぞれ専門家による解説を付し,さらに巻頭の編者による概説とあわせて人権宣言の系譜と現状とを明らかにする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
還暦院erk
12
蔵書。少しずつ通読しただけでは理解不十分。世界史資料や世界地図、各種辞書やグーグルさんで知識を補わねばならぬ所多数。それでも、苦労して読んで良かった。「基本的人権」が徐々にしかし確実に条文化されていく過程…数百年の歴史の流れと大勢の人々の労苦と犠牲を思い、本書刊行後(1957年以降)の更なる世界の変転も思い、現在の「あーあ」な日本も思い…。今は言葉がまとまらない。ノートしながら再読精読したら、また感想を記していきたい。2020/07/02
壱萬参仟縁
12
マグナ・カルタ(1215)は、本質的には封建制度温存のための文書(34頁)。権利請願(1628)は、予想以上に短くて驚いた。権利章典(1689)は、国王が王権により、国会承認なしに法律停止、執行停止するのは違法としている(82頁)。ヴァジニア権利章典(1776)は、権力は人民に存し、人民由来とする(109頁)。仏の人および市民の権利宣言(1789年)は、社会的差別が共同利益の上にのみ容認(131頁)。1条は社会の目的を共同幸福に(143頁)。独のヷイマール憲法(1919)は、130条1項に全体の奉仕者。2013/08/26
あかつや
8
各国の成文憲法のうち、人権宣言にあたる部分を集めたもの。一口に人権宣言と言っても、国ごとの性格が出ていて面白い。アメリカは英仏に比べるとしがらみなくて伸びやかだし、ドイツはやけに細かったり、インドも意外と細かい。そして本書のオチにあたる共産圏の国々、共産主義が人権なんて今となっては片腹痛え話だが、ソ連なんてすごいよ、金持ちに人権がないってちゃんと書いてある。ソ連の基本任務は「ブルジョワジーを完全に抑圧」することだってさ。この本の趣旨は何だっけ?共産圏は解説もすごくて、この部分を担当した人はアレなんだろな。2020/04/09
市井吉平
7
人権とその歴史について考える機会があり、購入。やはり、原典にあたるのはいいですね。それぞれの宣言の前に付されている簡単な解説も参考になるが、実際に読んでみると、人々がどんな状態を乗り越えようとして、どんな思いや考えでこれらの宣言を関係者に認めさせたか、文面から滲み出てくる気がします。マグナ・カルタが「朕は…」という形で、王自身が約束する形になっているのとかも初めて知って面白かった。本書冒頭にある「人権宣言概説」という解説も、コンパクトに人権宣言の歴史やポイントをまとめており、大変参考になる。2024/12/05
なつき
5
『人権宣言集』読了。岩波文庫。イギリスやアメリカやフランスやドイツなど各国の法律を、国ごとに通覧できるように編集されている。もちろん国によって違いや特徴はあれど、「人間の自由と権利を保障するための法律」は、こうやって順当に発展していくものなのだなあとパタパタ広がる展開を見た感じ。2017/07/07