出版社内容情報
心や脳の機能をダイナミックなシステムとして捉えようとした先駆的な書.その後の人工知能,カオスや自己組織化といった非線形現象一般を対象とする研究に大きな影響を与えた.また理系分野に留まらず,構造機能主義などの社会学にも多大な影響を及ぼし,今日では認知科学やシステムバイオロジーなどの方法論の基礎となっている.(解説=大澤真幸)
内容説明
心の働きから生命や社会までをダイナミックな制御システムとして捉えようとした先駆的な書。本書の書名そのものが新しい学問領域を創成し、自然科学分野のみならず、社会科学の分野にも多大な影響を与えた。現在でも、人工知能や認知科学、カオスや自己組織化といった非線形現象一般を解析する研究の方法論の基礎となっている。
目次
第1部 (ニュートンの時間とベルグソンの時間;群と統計力学;時系列、情報および通信;フィードバックと振動;計算機と神経系;ゲシュタルトと普遍的概念;サイバネティックスと精神病理学;情報、言語および社会)
第2部 (学習する機械、増殖する機械;脳波と自己組織系)
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
71
ウィーナーの探究は制御工学から通信工学へ進み、計算機における2進法の使用やデータ保存、随意運動から対人ゲームAI(学習機械)の開発にまで及ぶ。その根底には、ニュートン的時間からの飛躍…私達は自分の時間軸に沿ってしか物事を知覚できず、個々の時間軸の中で絶え間なく情報をやり取りしている…とい考え方がある(故に私達は光を発する星しか見られず、光を吸収する=逆の時間に沿って動く星があっても感知できない)。宇宙の仕組みの原点に情報のフィードバックを見るウィーナーにとって、科学者の責任は看過できない問題だったようだ。2017/07/17
molysk
64
船の場合、風向や海の状態がいままで移り変ってきた模様によって(通信)、舵をうまくとり与えられたコースにもっとも近い航路を船が進むようにすること(制御)。外界から得た情報を、その後の行動に役立つように一定の規則のもとに変換して取り入れ、それによって行動を外界に対して効果的に行う。ウィーナーは、通信と制御を中心とする一連の問題が、それが機械であろうと、生体組織のことであろうと、本質的に統一されうるものであることに気づく。この未解明の領域を、「舵手」を意味するギリシャ語から「サイバネティックス」と名付けた。2024/01/02
やいっち
58
第一版は1956年、第二版は1961年のもの。岩波文庫入りして古典という評価。専門家には知悉した内容だろうが、大英百科辞典を愛読書とする著者の広範な素養は、今も(専門家はおろか)門外漢の者にも読ませる中身となっている。まさに古典。2024/08/29
壱萬参仟縁
47
他人を出し抜こうとする者は、自己防衛のために社会を去らなければならなくなる。結合が密接な小さな共同社会は、相当な程度の恒常性をもっている。(略)飢餓からは富によって、世論からは秘密と匿名によって、個人的批判からは名誉毀損に関する法律と報道手段によって彼ら(大きな共同社会で栄えている人々)自身を防衛する。どのような組織体でも、情報の獲得・使用・保持・伝達のための手段をもつことによって、恒常作用が営まれる(302-3頁)。なんとなく、今の総裁選や、密室人事、採る側の論理『高学歴ワーキングプアからの脱出』などを2024/10/26
姉勤
37
電卓程度の能力のコンピュータが、タンスよりも大きかった1940年代。その当時に、生物の頭脳や身体の働きを工学、制御、電送装置など当時の技術を以って再現出来るかを考察する。微積分をはじめとする数式の証明に関してはチンプンカンプンなので、言及しないが、現代のインフラや工業の自動化の分野では当たり前のフィードバック制御、通信に関しては職業柄イメージはつかめたものの、それを人や動物の機能に応用して考える試論は、これが今から70年近く前の書物とは、感嘆。2016/06/03