出版社内容情報
言語の統一と分化に関わる要因を文明、社会、歴史との緊密な関係において考察。先史時代から第一次世界大戦直後までのヨーロッパを射程に収め、国家や民族との関係、話者の社会階層などから分析した、社会言語学の先駆的著作。
内容説明
比較言語学の巨人が、言語の統一と分化に関わる要因を、文明、社会、歴史との緊密な関係において考察。大言語から少数民族の俚言まで数多の言語がせめぎ合うヨーロッパの言語史を先史時代から第一次世界大戦直後まで射程に収め、国家や民族との関係、話者の社会階層や地位に着目して分析した、社会言語学の先駆的著作。
目次
先史時代
印欧諸語の伝播
ヨーロッパの印欧諸語
ヨーロッパ東部の非印欧諸語
語族
語族による言語分類の実用的な意義
言語と人種
言語と民族
言語と文明
言語の刷新〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
livre_film2020
36
言語の変遷を俯瞰的に見れる。ただ、第一次世界大戦あたりに書かれた本書では、メイエの独断と偏見に満ちた解説が散見される。文明語だったり、文学に対する威信の有無などそれは主観的でしかないだろうというような。そういった点に留意すれば、ヨーロッパの言語について網羅的に知れる良い本だ。2022/06/29
袖崎いたる
10
著者の学者としての使命感がみなぎる著作。フッサールがヨーロッパの危機云々と宣ったものの言語学の側からの声明でもある。岩波の青を戴いてはいるが、本願としては一般向け。2017/11/08
Akiro OUED
3
一つの社会は、意思疎通の手段がなければ存続し得ない。言語共同体こそが、真の連合形態だ。とすると、EU2.0は、共通言語を模索していくのかな。そうは思えない。将来は、精緻な非言語コミュニケーションが使えるようになる。言語にとって、相互理解の手段という役は、荷が重すぎる。好著。2022/06/18
大臣ぐサン
3
フランス比較言語学の大家、アントワーヌ・メイエが1918年に刊行。比較言語学の立場からヨーロッパの言語を分析し、言語学の視点から各民族の形成過程を解き明かしていく。メイエは英語、フランス語、ドイツ語などを大言語とし、ヨーロッパの言語は大言語に集約されるべきで、それ以外の小言語は淘汰されていくべきであると述べているが、現代の感覚からすると違和感がある。また、個人の偏見も大いに見られるのは本書が第一次大戦の後のナショナリズムが反映されているのだろう。民族意識と言語には密接な関係があると気づかされた一冊である。2021/05/05
ちょっかん
2
社会言語学の先駆けとされるアントワーヌ・メイエの著作。本書はメイエの網羅的なヨーロッパの言語に関する知識から、比較研究や言語の社会的な分析を行ったものである。本書以前は言語と社会は切り離すべきという考えが主流であったのに対し、メイエは言語と社会の密接な関わりを強調する。メイエのアルメニア語と印欧語の関係についての説明が知りたかったのだが、本書ではあまり詳しく記述されていなかった。少数言語に関するメイエの考えは、現在の言語学の潮流と相容れないところがあるが、これについては訳者の解説がわかりやすい。2018/07/19