出版社内容情報
現代は情熱を失った時代であり,人々は分別をふりまわすだけで,決して自ら行動に出ようとはしない.――さながら二十世紀の現代を予言したともいえる書.読者は読み進むにつれ,その批判の生々しさに,まるでつい昨日書かれた著作のようだ,と嘆声をあげずにはいられないだろう.「天才と使徒との相違について」を併収.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
砂王
9
大切なのは、バランスを保つことである。とよく言われるが、本ばかり読んでると分別はつくが、行動と決断ができなくなる。そして、小賢しい理屈屋に甘んじてしまう。少し、情熱的になるタイミングかもしれない。2016/05/03
Happy Like a Honeybee
8
人々は分別をふりまわすだけで、自ら行動しない。 現代は行動と決断に欠けた時代であると力説する。 大衆、マスメディア、宗教などキルケゴールの展開に息を飲むばかり。このような慧眼があるから、時代を感じさせない普遍的価値を持つ。浮気とは愛と遊蕩との情熱的な区別の排除。人は深みへ飛び込む事で助ける事を学び、他人を愛する事を学ぶのだ。2017/06/10
D.Okada
7
1846年に書かれた論文であるようだが、現代にも通ずるある種生々しい批判が綴られている。「社会性という、現代において偶像化されている積極的な原理こそ、人心を腐蝕し退廃させるもので、だから人々は反省の奴隷となって美徳をさえ輝かしい悪徳にしてしまうのだ。こういう事態になるというのも、個人個人が宗教的な意味で永遠の責任を負って、ひとりひとり別々に神の前に立っているということが見のがされているからのことでなくてなんであろう。(中略)こうして反省は個人を全生涯にわたってとりこにしてしまう。そして、この危機のはじまり2010/06/27
T
4
自己啓発っぽい、元気が出る。距離を置いて軽蔑して馬鹿にしてる感じが好き。2016/05/28
ダージリン
4
「現代の批判」は150年以上前の書評の一部のようだが、驚くほど現代に当て嵌まる。情熱を失い、自ら行動せず冷めた大衆、水平化として描いた姿は見事に今に重なる。水平化が行き過ぎ、自分より優位に立つ者の存在を本質的に許せない嫌な社会が語られるが、そこを如何に生きるかが問われることになる。「天才と使徒との相違について」も面白かったが、やはり無宗教の自分にはどうしても近付けないところを感じてしまう。2016/05/22