出版社内容情報
本書はフィヒテが,神の実在性についての深い思索を通俗的に簡明に説いた最初の宗教論で,「疑」「知」「信仰」の3篇に分け,人間の使命を,良心の声に服従するところに追究しつつ,いっさいを無限の生命の流れと見る汎神論的世界観を包括的に展開したものである.フィヒテ後期の宗教的傾向への転機をなす画期的述作である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
15
旧字体。 精霊と私の対話が第2篇で展開される。 第3篇で、表象は良心の命令に依つてのみ真理と実在性とを得る(150頁)。 学問は、危急の迫るに当つて先づ喚びさまされて、然る後に慎重に冷静に自然 の不動の法則を闡明し、この自然の全威力を概観して可能的開発を計算し得る に至るべき(164頁)。 わかったようなわからないような難しい表現である。 善は常により弱いものである、何となればそれは単純であつて其自身のために のみ愛せられ得るからである(166頁)。 2014/03/25
またの名
10
私は予想した、私は十分でないと思った、想定せざるを得ぬ気がしたといった調子で書かれ、第二部では精霊が話しかけてくる妙なテンションの哲学書。精霊にそそのかされ、主観と客観が分裂してると見えても私とは主観かつ客観でその間を結ぶ紐帯なので、自分も自分の前にある物もみな私が限定し存在させており、オリジナルなき像の像が戯れる夢にすぎないと思弁。底抜けの独我論では……と読者が困惑してるうちにカント哲学の導入と乗り越えを経て、個人の自己など意味をなさない一つの全体的意志が支配する宇宙論へ邁進。我と没我の振れ幅が超極端。2017/11/30