出版社内容情報
認識に関して経験的なるものと先験的(ア・プリオリ)なるものを区別し,先験的認識の妥当する範囲と限界を明らかにした本書こそ,哲学史上いわゆるコペルニクス的転回をなしとげたとされる世紀の古典である.『実践理性批判』『判断力批判』とその後に展開してゆくカントの壮大な哲学体系の基礎であり,また総論でもある.
内容説明
全体の中心をなす先験的論理学のうちの第二部「先験的弁証法」を収める。独断的形而上学を批判し、純粋理性が必然的におちいる二律背反を克明に分析して、ついで有名な神の存在証明の論駁へと移ってゆく。最も有名なそして興味深い部分である。
目次
第2部 先験的弁証論(純粋理性の概念について(理念一般について;先験的理念について;先験的理念の体系)
純粋理性の弁証的推理について(純粋理性の誤謬推理について;純粋理性のアンチノミー;純粋理性の理想))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
18
難解至極変わらず、訳文も助長。本巻では、純粋理性の先験的弁証論として、カテゴリー(純粋理性の概念)、アンチノミー、純粋理性の理想についての思索・論考。特に「神の存在」に対する存在論、宇宙論からの言及に興味を覚えた。厳密に体系立てて遺漏なく可能な限り論理を積み上げていく思索プロセスに驚嘆!カントの偉大さを痛感した。一つ一つレンガを積み上げるようにそれぞれの行にその次の行を積み重ねて確認しつつ進めていくも表層部の理解に留まっている印象大、消化不良気味。 めげずに、気力を振り絞って最終巻も。2013/02/03
壱萬参仟縁
17
途中、上下2段に分かれて、正命題と反対命題と分かれて証明されている。 第2章第7節の理性の宇宙論的自己矛盾の批判的解決(174頁)なんて 表現は、天才ぐらいしか使わないのだろうな。 宇宙と人間を同時的に考えることは僕にはなかなか。 しかし、スケールの違いはあっても、それが科学のよさなのかもしれない。 人体も小宇宙という謂いもあるのだから。 世界は、時間的には始まりをもたず、空間的には究極の限界をもたない(195頁)。 2014/03/26
中年サラリーマン
15
壮大やね!カント流に世界を再構築し直している。GODは認識できない。違う次元のものといってるのかな。後、桁違いに壮大だからか、唯識?空?みたいな香りを微かに感じたりもした。気のせいかもしらんが…2014/01/04
春ドーナツ
10
うろ覚えだけれど、光文社古典新訳文庫版の投稿で「なんで理性の分析に突入したら、道徳や神の話になるの」と書いた。200頁辺りで私の誤謬に気づいた。理性と知性を混同してたよ。辞書をひく。【知性】物事を知り、考えたり判断したりする能力。*知性が究明されないのは、知性を働かせて哲学しているからだ。これってアプリオリ? カントの使い方と違うが、理想を中間項に置くことで、理性ー理想ー理念、理性の意味が腑に落ちた。ボタンの掛け違え読書から脱却できた。迷妄の雲が春風よって雲散霧消した。私は自分が恥ずかしい。これって告白?2024/02/18
Francis
9
カントの名著「純粋理性批判」も中巻まで何とか読めた。内容が理解できているのか、怪しいのだが、神の存在証明にまで至る。西欧合理主義はここまで突き詰めて考えていたのね。2023/05/30