出版社内容情報
貴族令嬢ジュリと家庭教師サン・プルーの間の,愛と貞節のこの書簡体小説は,「告白」「エミール」と並ぶルソーの三大長篇のひとつである.過去の恋の思い出と,妻および母としての義務との板挟みになってついに力つきて倒れるジュリの運命は,ルソーのロマンティシズムと革命的社会観とを,その優麗な描写の中にあますところなく語る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
132
ここにきて、最初から読み返したくなった。途中にサドの『恋の罪』を読んだからで、この二人の設定があまりにも似通っているように思うからだ。ただ、サドの方では、ジュリにあたる娘の結婚相手に本当の悪人がくるところは全く違うのだが、真実の愛の相手は一人しかいないところなどそっくりで、サドが真似たのかと思う。この二人を比べるのはあまりにも不遜なのだけれど。恋をするだけで罪であり不幸になるなら、何が幸せかと考えてしまう。とにかく最終巻へ。2017/08/24
lily
121
3巻だけでもルソー思想の幹を照らしているかのよう。恋愛論、国家論、幸福論、教育論を書簡の形で饒舌に代弁する。晩年の孤独な散歩者の夢想の淡い香りも心地良く漂わせている。2019/09/05
NAO
52
ジュリは許嫁と結婚させられ、サン=プルーは絶望して軍隊に。四年後、サン=プルーが戻ってきて、話は新たな展開をみせる。結婚し子どもがいるからといって、駆け落ちまで考えた元恋人に全く心が動かなくなるものだろうか。妻が全てを打ち明けてくれたからと、夫は、妻の元恋人に全く嫉妬せずにいられるものだろうか。この夫の評価がかなり低いというのも納得できるほどどうにも嘘くさい展開は、サン=プルーと同じような経験を持つルソーの希望なのだろうか。2017/04/27
しんすけ
4
前巻から6年ほどの歳月を経た。ジュリは嫁ぎヴォルマール夫人となり二人の息子を生んでいる。冒頭では、サン=ブルーは死んだかの如く語られる。この6年間に互いの連絡は途絶えていたのだろう。ジュリとの再開をエドワードに告げるサン=ブルーの文章は、その美しい場面を精緻に綴っていく。この文章を読むだけで第三巻の表紙がそれを表すものであることを読者は気づく。ここに至る経緯を振り返ると物語は陶酔的な域に入った。だが結ばれる可能性が無い男女を対象に、なぜルソーはこのような甘味ある雰囲気を作り出さねばならなかったのだろうか。2016/07/05
とまと
3
ルソーの秋にしよう。2012/09/11