出版社内容情報
十八世紀に開花したフランス唯物論のもっとも尖鋭な代表者といわれる医師ラ・メトリ(一七〇九‐五一)の主著.主として生理学の力をかり,人間の精神が脳という物質の働きにほかならぬことを論証したもの.発表されるや宗教界に激しい憎悪の嵐をまきおこし,各宗派は「一人の哲学者を迫害するために力をあわせて狂奔した」という.
内容説明
一八世紀に開花したフランス唯物論のもっとも尖鋭な代表者といわれる医師ド・ラ・メトリ(一七〇九‐五一)の主著。書名が示すとおり、主として生理学の力をかり、人間の精神が脳という物質の働きにほかならぬことを論証したもの。発表されるや宗教界に激しい憎悪の嵐をまきおこし、各宗派は「一人の哲学者を迫害するために力をあわせて狂奔した」という。
目次
ラ・メトリの生涯について(訳者)
出版者の言葉
ゲッチンゲン医科大学教授ハルレル氏に捧ぐ
人間機械論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
52
「人間の心はどこにあるか?」という問いに対して二種類の答え方をする人が多いと思う。一つは胸を指差し、もう一つは頭を指差す。この本は、初めて「人間の感情は脳の信号によって生み出されたものにしかすぎない」、「生命活動を停止しても近細胞が動くのは神経反応によるものである。そのため、身体全てに魂は存在しない」という考えを示したものである。デカルトは「自己」という実体があることによって世界を認識できるとした。一方、デ・ラ・メトリは身体という器に入った神経によって人間は感情というものを知覚できると思い込んでいると説く2014/10/17
lily
28
人間は機械であるという一見すると狂気な言葉を構築したが、中身は生理学に基づいた至って冷静な論理なので驚きは皆無。しかし著者の必死の喧嘩売りは伝わるから文体は楽しめる。やけに生殖器の生理作用を強調する。もしかしてこれが主題の意図?2019/06/21
さきん
24
宗教やルネサンスに依らない人間を機能から物質として捉える。デカルトの魂と肉体を別々に捉えるという考えに批判。魂や心は、機械的機能から考察できるとしている。 フリードリヒ大王の医師兼サロンメンバー。 周りを批判して回るかなり強気の筆致。 医師としての生理に関わる記述が多い。2022/03/10
壱萬参仟縁
23
ラ・メトリが本屋の保護でオランダ国境を越えてプロシャに逃れ、フリートリヒ大王の宮廷にはいったとのこと(16頁)。メトリは人にかくし立てをしない陽気な気持のよい人間であった(21頁)。研究(・点)なるものの無上の 快楽(・点)の本質をあきらかにせんがために、愚生の足下に捧呈致しますものは愚生の書物にあらずして、愚生自身であります(26頁)。研究こそ、年齢と、場所と、季節と、時とを問わざる快楽であります(32頁)。人間はきわめて複雑な機械である。2015/10/16
しゅん
19
読んでいて何の違和感もないことに驚き。今読めばあまりに当たり前の唯物論。食と餓えの観察から心の働きを否定する論を取り出すところがおもしろい。「ある年齢までは人間は動物以上に動物である。乳の河のまんなかで餓死する動物は何者か?人間だけである」2017/10/17