出版社内容情報
ローマの詩人哲学者ルクレーティウスの現存唯一の長詩でありエピクロス哲学の原子論的自然観を詳述した科学的啓蒙書として現在無二の史料的価値をもつ作品である.一切の現象を因果関係において把え,原子と空間から成る世界の自然法則を説明して現実の生を楽しむことを教えたこの雄大な長詩は古代の哲学の圧巻である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
73
デモクリトスや特にエピクロスの影響を受けた彼は、全ての根源に原子を想定し、一切を原子に基づく因果関係で捉え、彼なりの自然観を叙事詩の形で表現した。彼のスポンサーらしき人物への語りかけの形式をとりつつ、一般への啓蒙書として書かれたようだ。とはいっても、我輩の常識からしても、地震についても雷鳴、火山(噴火)、病気(疫病)、魂、精神と肉体など、自然現象や精神や肉体について荒唐無稽な説明が展開されて、理解は及ばなかった。2020/12/15
ステビア
27
古代ギリシャ人、恐るべし(ルクレティウスはローマ人だけどね)2024/02/18
逆丸カツハ
25
カルロ・ロヴェッリの本で紹介されていたので読んだ。こんなにきれいな文章ならもっと早く読んでおけば良かったな。2024/03/29
rigmarole
18
印象度A-。40年近く前に買った本を断続的に読み、4年4か月かけてついに読了。それだけ読み進めるのに苦労したわけですが、哲学は単なる歴史的知識ではありません。著者を取り巻く状況に身を置き、著者と共に考える。だから想像力、精神的労力を要するわけです。読むにつれ、観察と論証だけで、ここまで現代の自然観に近いものを見出した(恐らくエピクロスの)鋭利な洞察に驚嘆せざるを得ません。もちろん、現代では誤っているとされる主張や無理っぽいこじつけもたくさん見られますが、大筋において、この時代にしてこの卓見は素晴らしい。2024/03/17
Ex libris 毒餃子
12
『奇書の世界史』で紹介されていたので、読んでみる。理論的枠組は現代と遜色ない。つまりは、観察・実験・実証という科学的手法がローマ時代には実験器具の開発が伴わない等の難しかっただけでは、とも思う。または、科学的プロセスの発想そのものが近世まで待たないといけないのだろう。本書自体が後世の哲学者に多大な影響を与えているため、読んで良かったです。2019/12/17