出版社内容情報
真実そのものの把握なしには真実らしく語ることさえ本来的に不可能であることを立証し,「哲学」の立場から鋭く当時の弁論術を批判したのがこの対話編である.本書はプラトンの代表作の一つであって,特に『ソクラテスの弁明』をはじめとする前期著作群を『テアイテトス』以降の著作に結びつけてゆく重要な役割を担っている.
内容説明
真実そのものの把握なしには真実らしく語ることさえ本来的に不可能であることを立証し、「哲学」の立場から鋭く当時の弁論術を批判したのがこの対話篇である。本書はプラトン(前427‐347)の代表作の一つであって、特に『ソクラテスの弁明』をはじめとする前期著作群を『テアイテトス』以降の著作に結びつけてゆく重要な役割を担っている。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
299
プラトンは大学1年生の時に履修した教養科目の哲学で読んで以来。当時は、この科目にそんなに真面目に取り組んでいなかったので、内容はもはや忘却の彼方。したがって、事実上の初読のようなもの。まず、第1印象は、まことにギリシャらしいことに空気感がきわめて晴朗であること。パイドロスとソクラテスの対話が交わされるのも、イリソス川のほとりといった自然の中においてである。弁論作家リュシアスの「人は自分を恋している者よりも恋していない者にこそ身をまかせなければいけない」というパラドクシカルな主張に、ソクラテスが自らの論を⇒2024/07/29
のっち♬
118
当時一世を風靡した弁論術の吟味と批判。ライフワークが実を結んだ著者の心情を表象した自然を背景としたのどかな語りだが、取り上げられる例文や頻出する当てこすりは粘性の悪意を感じる。本書ではじめて規定された魂の自己運動性は著者が宇宙全体をとらえるための主要モチーフで、魂の三部分説や想起説をはじめ数々の哲学思想・体系を織り込んだ「恋」の物語の発展は前半の焦点。また、終盤で述べられる本質に即した言論の在り方や愛知者の在るべき姿には、執筆とアカデメイアが軌道に乗った著者の確かな自信が窺える。"哲学のすすめ"たる一冊。2022/02/15
Gotoran
59
恋(エロス)と弁論術(レートリケー)がテーマの中期プラトン対話篇の代表作。紀元前五世紀末、真夏のある晴れた日の日盛りアテナイ郊外のイリソス川の畔でソクラテスとパイドロスが対話する。恋は狂気であるという弁論家リュシアスに対して恋の狂気は神的なものであると主張するソクラテス。それを説明するために魂の本姓について語っていく。後半は弁論術について展開され、物事の本質を突くという言論の在り方について議論が進んでいく。巻末の訳者解説が解り易く本文理解に役立った。2021/05/03
イプシロン
48
稀代の名作をあげろと問われて、頭に浮かぶのはソポクレス『オイデイプス王』だ。しかし、このプラトンの『パイドロス』もそれに適った名作と言える。リシュアスが書いた恋に関する論述について、ソクラテスとパイドロスの二人が対話に終始するという単純な構成であるが、そこに埋め込まれた修辞やプロットの巧緻さは見事だ! 慣例、小説における会話文は、一対一を原則として描くのがよいとされている。登場人物が多く、三人以上の会話にせざるを得ない場合もある。また近代以降の小説は、そうした点で修辞技術のひけらかしが鼻につくことも多い。2019/11/03
zirou1984
41
再読。『饗宴』に続くエロース談義パート2。同著にも出てきた未目麗しき青年パイドロス君に恋のレクチャー個人指導なソクラテス(50代初老)は相変わらずの口説き文句込みで絶好調。「君という男は世にも愛すべき、それこそ本当に金無垢のような人間だね、パイドロス」しかし後半部分では前半の挿話を題材にしながら弁論術の持つ欺瞞性や知が持つ権威に対しての警鐘が主となっており、エロースの目的である真理や愛知への追求を根底に置かずして人と真に対話できることは不可能であると説いていく。構成的上手さも含め優れた対話篇である一冊。2016/12/11
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