出版社内容情報
ゴッホ(一八五三‐九〇)が一発の銃弾で三十七歳の生涯を閉じたとき世人はその作品をガラクタとしか見ていなかった.この書簡集はこうした世の無理解や悪意と戦って画業に燃焼しつくした天才の類まれな魂の記録である.上巻には親友であった画家ベルナール宛の,中・下巻にはいわば生涯を兄にささげた弟テオドル宛の書簡を収めた.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
財布にジャック
67
弟のテオ宛のゴッホの手紙の数々が、ゴッホの生涯を浮き彫りにしてくれます。創作ではなく本当にゴッホがこの世に生きていて、こんな手紙を書いていたと思うだけで震えがきます。常にお金に困り弟に助けを求めるゴッホ、ゴーギャンに多大な期待を膨らませるゴッホ、南仏での創作に勤しむゴッホ、日本に憧れを抱くゴッホ、ゴッホファンなら必読の一冊です。余談ですが、「夜のカフェ」という絵が個人的に一番好きなのですが、手紙の中に「カフェとは人が身を滅ぼし、狂人になり、犯罪を犯すような場所」と書かれていたことにショックを受けました。2013/03/20
aika
46
「僕は絵の中で音楽のように人を慰めるものを語りたい」と語るゴッホにとって、絵は宇宙そのものでした。お金と画材を送ってくれる弟・テオへのお礼から始まり、握手で結ばれるゴッホの手紙からは、ゴーギャンがやって来るのを待ちわび、貧しさの中でも希望を抱く日常が生き生きと目に浮かびます。そしてゴッホの死生観には目を見張りました。コレラや癌、肺病という人を死へと導く不幸の原因を、星の世界へと運んでくれる天上の交通機関だと記した場面です。どこか賢治のような、東洋的な印象をも感じさせます。無性に星月夜が見たくなりました。2020/03/21
壱萬参仟縁
33
1953年。リシュパンが『芸術愛は真の愛情を失わせる。』(14頁)『死人を死んだと思うまい 生ける命のあるかぎり 死人は生き、死人は生きてゆくんだ』(42頁)。わが家を持ち、落着きと健康とをとり戻したい(61頁)。時には芸術から全く離れてしまって、やりなおそうとする意欲を放擲してしまいたくなることがある(82頁)。日本人は素描をするのが速い、まるで稲妻のようだ、それは神経がこまかく、感覚が素直なためだ(105頁)。2021/06/23
吉野ヶ里
27
ゴーガンが好き過ぎで、ちょっとホモっぽいと思った。あと金とか絵の具の要求の仕方が変化していくのが面白い。ちょっとずつ申し訳なくなっていく感じ。生と死、人間について真剣に見つめようとしている姿勢には心打たれるものがある。真面目過ぎた系の人なんだろうなって。《孤独や、心配や、撞着や、自分の持っている好意が充分満たされない友情といったものはとても悪い、悲しみや失望による精神的衝動は、性生活以上にわれわれを徐々に衰弱させる。われわれーーとは、動じやすい心の幸福な持ち主のことだ。》2016/06/10
mayumi225
26
ゴッホのテオ宛ての手紙。ゴッホ自身の言葉で,私たちも美術展で見たことのある,後にあまりにも有名になる絵たちの構想などを書いているから興奮する!後半は,ずっと黄色い家にゴーガンを迎えるに当たってのわくわく話。片思いの乙女のように,来てくれるかな,ううん,来てくれなくったっていいの,第一信用してないもの,やっぱり来てくれるのねっ最高の家具を用意しなくっちゃ!みたいなくだりが炸裂する。純粋な人である。そして,お金と絵の具と画布を,兄貴に送り続けるテオ…心から「あなたのおかげです,ありがとう」と言いたくなります。2018/07/12
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