出版社内容情報
イギリスの歴史家フィンリー(一九一二―八六)の,明快で読みものとしても楽しめるギリシア古代史入門.社会学,人類学の成果を踏まえ,二大叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』を詳細に読みこむことによって,ギリシア古代がどのような社会であったかを説き明かし,新しいホメロス学の方法を提起したものとして大きな反響を呼んだ.
内容説明
イギリスの歴史家フィンリー(1912‐86)の、明快で読みものとしても楽しめるギリシア古代史入門。社会学、人類学の成果を踏まえ、二大叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』を詳細に読みこむことによって、ギリシア古代がどのような社会であったかを説き明かし、新しいホメロス学の方法を提起したものとして大きな反響を呼んだ。
目次
第1章 ホメロスとギリシア人
第2章 吟唱詩人と英雄たち
第3章 富と労働
第4章 家庭・親族および共同体
第5章 道徳と価値
補遺1 『オデュッセウスの世界』再見
補遺2 シュリーマンのトロイア―百年を経て
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
10
古代ギリシア叙事詩を歴史学的に批判検討した本。フレイン(フィロ)概念が現代での「愛」概念ではなかったことが新たな発見。2025/01/18
ジュン
10
ホメロスの作品を社会学や人類学の手法を用いて解き明かす。ギリシアに思い込みの強い人にはきついものがある。トロイア戦争は部族戦争の延長、小規模な小競り合いだったと分析しているのだから。けして文学の否定ではないのが本書の特徴。古典学を刷新した歴史的な一冊だ。2016/10/08
misui
9
『イリアス』『オデュッセイア』はあくまでも詩人の語り物であって、作品から読み取れる社会構造はともかくとして、トロイア戦争など史実をそのまま描いたものではないよ、ということを提起した先駆的著作。シュリーマンを代表としてロマン的にテキストを信じる向きにはいいカウンターになったのだろう。ただ近年の研究によって本書すら若干覆される発見もあったそうで、最新の知見によるアップデートも見てみたいところ。2021/01/20
サロメ
4
イリアス、オデュッセウスを読み終えた後、一度手に取ってみてはどうでしょう。ホメロスが描く世界を、社会学や考古学などの知識をもとに冷静に分析してあり、しかもわかりやすく説明してくれています。人類至上最高の文学作品といわれるホメロスを読み、その世界に魅了されたなら、その文学的背景を知りたいと思うはず。素人でも十分楽しめます。2010/09/19
翡翠
3
気づきがたくさん得られた一冊。ホメロスはあくまでも詩人であり、歴史をそのまま写しとったものではないこと。口承伝承による定型表現の大切さなどは思いもよらなかった。それから神々からの恩恵はあくまでも偶然によって善にも悪にも転ぶこと。神々に対する畏怖も愛もなかったことには驚いた。「イリアス」「オデュッセイア」の理解を深めたい方にお勧め。2021/02/22