出版社内容情報
認識と実践との関係を弁証法的唯物論の立場から体系的に論じた『実践論』,唯物論的弁証法の核心とされる「対立物の統一の法則」についての系統的な分析を通して事物の矛盾の法則を展開した『矛盾論』.ともに一九三七年延安の抗日軍政大学での講義にもとづくもので,毛沢東(一八九三‐一九七六)の認識論,方法論に関する基本文献である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
恋愛爆弾
11
『矛盾論』の「矛盾の同一性」のくだりが凄すぎる。これはケツの青いエリート学生が騙されてマオマオ言っちゃうのもわかる。2025/04/22
T. Tokunaga
8
前世紀の思想の覇者といえば、結局、毛沢東なのではあるまいか。そう思って読んでみたら、実践論、矛盾論ともに、いまの日本、いや全世界の言論なるものに通じる「ファクト」「データ」「ソース」「フィクション」などと等価の思考が行われている。特にこの矛盾論なんて、だいたいいまの西洋映画(フランス映画でさえ)や日本アニメなど、「矛盾の把握、解消、成長」であることはいえるだろうし、やっぱり毛沢東的なる思考は、PDCAサイクルからインターセクショナリティのフェミニズム理論まで、あらゆるところをうろついているように思う。2025/02/19
らい
8
『法華経を生きる』に関連して。実践論と矛盾論が説かれるが、特に「実践論」の方が共鳴した。感覚を通した認識から始まり、実践を繰り返す中で、対象の本質に迫れるし、理論を構築することもでき、正しい認識に到ることが出来ると。そして、現実を構成する要素は刻一刻と変わっていくのだから、一度の成功に安穏してしまったら、その認識も古びたものになり、頑固な思想になってしまうと。「矛盾論」も良かったのだけど、この世には矛盾があり続けるというなら、なぜ共産革命でその矛盾が無くなると思ったのだろうか。2022/03/29
荒野の狼
8
「世界の大思想(河出書房)」では「実践論」「矛盾論」で重要なことは、毛沢東が弁証法的哲学を具体的実践のなかに応用し、実践を通じて学び発展させるという観点を確立したこと(「弁証法の活学活用」同書p416)で、当時中国では、「ここで展開されている理論にもとづいて農民が困難な問題を分析し解決の方法を見つけるという方法をとることが提唱された」としている。2021/04/01
古川
8
これは哲学書ではない。神学問答に近いかもしれない。「レーニンは○○と言った。よって○○である」という物言いが続き、なぜならばレーニンは正しいからであり、なぜ正しいのかといえば、レーニンは偉大だからであり、なぜ偉大なのかといえば、正しいことを言っているからである、といった具合である。つまりはよくあるビジネス新書と変わらないのだが、経営者が哲学者である必要はないし、実際毛主席はこれで天下取っている。問題はその後、このやり方を科学含むあらゆる分野に適用したことであり、こういう悲劇が起きる可能性は中国に限らない。2014/10/15