出版社内容情報
明治四四年から敗戦直後まで,『東洋経済新報』において健筆を揮った石橋湛山(一八八四―一九七三)の評論は,普選問題,ロシア革命,三・一運動,満州事変等についての論評どれをとっても,日本にほとんど比類のない自由主義の論調に貫かれており,非武装・非侵略という日本国憲法の精神を先取していた稀有なもの.三九篇を精選.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
逆丸カツハ
33
第一次大戦と第二次大戦のあいだにあって、小日本主義を唱えた慧眼は素晴らしいと思った。特に、それが道徳的な立場からのみ主張されたのではなく、現実的な立ち位置と他国の道義を問えるようなものを目指した、怜悧な利益についての計算をも有していたことに好感する。利益を完全に排した道徳は持続しないか、それ自体が悲劇を生む可能性があると思うから。とはいっても、小日本主義の道に歴史は進まなかったが…。それでもなお現実を見据えた理想を目指していて、素晴らしいと思った。2024/02/23
イプシロン
23
今の日本に湛山のような政治家が10人いたら、この30年はまったく違う道を歩んだだろうと思わせられた。収録は39編なだけに、幾分の不足感は否めなかったが、それでも彼の思想が抜群に優れたいたことが明瞭に読みとれた。具体的に言えば「自由」を基調とした民主主義。何があってもこれが基盤。その思想の根底にはルソー、ミル、そしてイエス、日蓮という強靭なまでの人間主義に由来する。昨今もメディアは視聴率や再生数稼ぎに躍起だが、湛山はそうした点にも言及。「罪のない者だけが石を投げよ」と訴える。政治家云々の前に、人間として2025/01/25
アミアンの和約
21
東洋経済新報記者にして後に総理大臣にもなる石橋湛山の評論集。彼の主張である自由貿易主義、個人主義に基づいた国民主権がよく表れている。令和の今でも治っていない自治体の中央政府による補助金依存体質に関しても言及があったり今日でも通用する内容も多い。惜しむらくは戦後の評論が自民党の広報誌のようで面白くないところだろうか。マスコミ人は政治家になってはいけないということか。2023/09/22
masabi
14
【概要】1912-1968までのジャーナリスト石橋湛山の政治評論集。【感想】自由主義、小日本主義、軍縮、中ソとの国交交渉と時代は変わっても主張すべきことは主張する。植民地の放棄や軍縮が不可避ならば率先して行い、欧米に対して道義的に優越した地位を目指すほうが良い。植民地が国防上の災禍を持ち込む。これらの小日本主義の主張は戦果に湧く軍部にも国民にも耳が痛い。中国にしてもロシア革命にしてもナショナリズムの勃興を当然のものとして干渉を戒めるなど他国民に対しても目線を同じくしている。2022/03/26
qwer0987
13
「人が国家を形づくり国民として団結するのは、人類として、個人として、人間として生きるためである。決して国民として生きるためでも何でもない」。明治の段階でこう訴えた石橋湛山の先見性に目を見張る。実際彼の主張は現在から見てもかなりリベラル。植民地支配を否定し、労働争議に理解を示し、女性の社会進出を推進し、戦争に対して否定的な見方を示す。民族自決の観点からの独立運動の擁護など、宗主国側の人間としてはすごい主張だ。外交も対話を重視し、国際協調と平和を強調する。保守反動の見られる時代だからこそ再注目すべき政治家だ2025/02/20