出版社内容情報
風土とは単なる自然環境ではなくして,人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない.こうした観点から著者はモンスーン・沙漠・牧場という風土の三類型を設定し,日本をはじめ世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした.今日なお論議をよんでやまぬ比較文化論の一大労作である. (解説 井上光貞)
内容説明
風土とは単なる自然環境ではなくして人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない。この観点から著者(一八八九‐一九六〇)はモンスーン・砂漠・牧場の三類型を設定し、世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした。
目次
第1章 風土の基礎理論(風土の現象;人間存在の風土的規定)
第2章 三つの類型(モンスーン;沙漠;牧場)
第3章 モンスーン的風土の特殊形態(シナ;日本)
第4章 芸術の風土的性格
第5章 風土学の歴史的考察(ヘルデルに至るまでの風土学;ヘルデルの精神風土学;ヘーゲルの風土哲学;ヘーゲル以後の風土学)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
47
モンスーン型、牧場型、砂漠型という風土の分類が、人々の気質の違いをつくっているという着想が見事だ。筆が走り過ぎているのと、バラバラに発表された文章の集積なのとで、文章の質は低い。とはいえ、後に同様の着想で書かれた本が多いことからも、本書の着想に先見性があったことは疑い得ない。問題は日本と欧米の2項に3項目を入れた世界観と、帝国的な見方が裏腹になっていることだ。前者が唯物史観の人類学に行く系統になり、後者が日本人論になるとすると、まとまりのなさと射程の広さという評価がそのまま本書の可能性になっている。2023/07/22
Kawai Hideki
40
世界数十億人の人類の性質とその歴史を、それぞれが生活する土地の「湿度」によって分類•説明しきってしまおうという凄い本。砂漠、牧場、モンスーンという風土が形作る人間の姿は説得力があるし、それを裏付けようと持ち出される古今東西の人物、書物、美術品、歴史的逸話の数々に圧倒される。多少、都合の良い証拠に偏っているきらいはあるものの、インターネットのなかった時代によくぞこれだけの情報を集められたものだと思う。2014/10/08
金吾
37
◎大好きな作品です。初めて読んだ時は論理的ではありませんがその視点のすごさと風土が民族性に与える影響を考えさせられて感銘を受けました。久しぶりに読んでも面白かったです。2023/03/24
おさむ
33
「風土とは、人間の精神構造に組み込まれた自己了解の仕方である」。風土が人間の文明や文化に与える影響を考察した名著。時に哲学書的な記述が難解だが、モンスーン型、砂漠型、牧場型の3種に大別して、おおぐくりで世界を見てみる手法はわかりやすい(梅棹忠夫の文明の生態史観に比べると粗削りな点は否めないが)。温順な自然を持つ西欧にはあくまで法則を求めて精進する傾向が生まれ、突発的に人間に襲い掛かる自然を持つ日本は運を天に任せるような諦めの傾向が支配する、との指摘は、今尚通じる部分があるようにも感じる。2020/06/29
拓也 ◆mOrYeBoQbw
27
文化人類学。世界の土地の風土を『モンスーン』『沙漠』『牧場』などに分け、風土由来の気質や文化と、国家、宗教の辿った歴史との関連性を考察した一冊です。内容に関しては和辻氏自身の美的感覚や個人的見解から描かれてる部分も多いですが、風土学の流れや論理体系を作る過程はいつの時代でも面白く読めると思います。体系化を主とした和辻氏と、蒐集を中心とした南方熊楠氏の『十二支考』などを読み比べるのも面白いですね(・ω・)ノシ2016/07/03