出版社内容情報
「帝国主義はいわゆる愛国心を経となし,いわゆる軍国主義を緯となして,もって織り成せるの政策にあらずや」.明治34年刊行の本書で,幸徳秋水(1871―1911)は帝国主義の本質を喝破.その先見性は今なお色褪せず.(改版)
内容説明
「帝国主義はいわゆる愛国心を経となし、いわゆる軍国主義を緯となして、もって織り成せるの政策にあらずや」。明治34年に刊行された本書で、幸徳秋水(1871‐1911)は帝国主義の本質を喝破。該博な知識を駆使し、レーニン、ホブスンに先駆けて複雑な帝国主義の構造をえぐり出した本書の先見性は、今なお光輝を失わない。
目次
第1章 緒言(帝国主義は燎原の火なり;何の徳あり何の力ある ほか)
第2章 愛国心を論ず(帝国主義者の喊声;愛国心を経とし軍国主義を緯とす ほか)
第3章 軍国主義を論ず(軍国主義の勢力;軍備拡張の因由 ほか)
第4章 帝国主義を論ず(野獣肉餌を求む;領土の拡張 ほか)
第5章 結論(新天地の経営;二十世紀の危険 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
74
麟鳳は荊棘に栖まず。 大逆事件捜査中の1910年、発禁処分になった書。 今読むと、常識的なことが書いてある。古今東西の知識を駆使、帝国主義の悪、戦争反対。 当時の人がどれだけ理解できたか。 明治の文語体文章読みにくい。 肯定か否定か分かりにくかったり。 リンコルンて誰?と思ってしまった2021/08/08
S.Mori
6
この世界の癌といえる帝国主義に対する透徹した洞察が書かれた本です。格調高い文語体の文章に惹きつけられます。国家が無軌道に膨張していく危険性が正確に記述されています。特に感心したのは帝国主義の経済の部分の病根を描き出していることです。強国が弱小な国を侵略する時は、利益の事しか頭にない実業家の投機の対象になることが述べられています。これは現在のアメリカが行っていることです。軍事力で他国を圧倒し、その国の富を略奪します。この本が書かれたのは20世紀の初頭です。その頃から帝国主義の悪しき状態は改善されていません。2019/06/07
ゴッツ
5
社会主義者の視点から当時の帝国主義を痛烈に批判していた。「愛国心など美辞麗句で欺き、軍国主義を増長させ戦争などの蛮行を肯定させる」という主張は共感が持てる。しかし、欠点の多い社会主義が必ずしも正しいというわけではない。2016/03/04
壱萬参仟縁
5
解説によると、社会保障の原点が書かれている。社会問題という巨大な怪物、その実体は? リチャード・コブデンの貧困や失業問題を解決するための、国民年金と国民保険を導入した社会保険の党へ変えたかったようだ(170ページ)。帝国主義は燎原の火(15ページ)。愛国心を経とし軍国主義を緯とす(19ページ)。愛国を強調すると軍拡につながるので危険。選挙を棄権したのが危険を招く。目指すべきは平和憲法で軍縮だった筈。帝国主義とは大帝国建設、領属版図大拡張(85ページ)。「もう終わったことだ」というのは被害者の台詞であろう。2012/12/27
里馬
5
帝国主義を批判し平和を訴え当局に睨まれ死罪となった幸徳秋水。。。という背景云々より僕は改訂前の本を古本屋で買ったので旧仮名遣い、言葉遣いに興奮しました。2009/11/03