出版社内容情報
途方もない博識と巧緻をきわめたプロット。極度に凝縮された文体。〈知の工匠〉ボルヘスの真骨頂。『伝奇集』とならぶ代表作。
内容説明
途方もない博識と巧緻をきわめたプロット、極度に凝縮された文体ゆえに、“知の工匠”“迷宮の作家”と呼ばれるボルヘス。その全仕事の核となる、『伝奇集』と並ぶ代表作。表題作のほか、「不死の人」「神の書跡」「アヴェロエスの探求」などを収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
95
歴史、神話、伝説などの人物を語り部、時にはモチーフにして語る寓話的「有り得たかもしれない物語」の再構築。個人的には「神学者たち」のマルクス・アウレリウスとヨハネス・デ・パンノイアの信仰するものが相反していたといえ、本質は同じ者の同族嫌悪によるいがみ合いが行き着いた先が無性に哀しい。そして「アステリオーンの家」でのミノタウロスとして幽閉されたアステリオーンの痛ましいまでの無垢さや「アべンハカン」の自己を否定し、成り代わることで「自分」になれるという事実も。2017/04/08
HANA
67
短編集。登場人物が現実ではなく、形而上の世界に生きているような印象を受ける。「ザーヒル」とかその最たるものだし。「タデオ・イシドロ・クルスの生涯」の主人公も、現実とは何か別の思想よって従容と死に赴く。それとは別に迷宮と永遠をテーマにした諸作は好み。ミステリのあの形式を扱った「アベンハカーン・エル・ボハリーおのれの迷宮にて死す」とか秘められた智「神の書跡」、何故か読んでいると淋しくなってくる表題作とか。それにしてもボルヘスって、何故か他のラテンアメリカ作家と印象が違うなあ。土地と切り離されているせいかな。2017/07/18
スプーン
42
読者を魔界に引きずり込む、南米の作家の短編集。謎と狂気をはらんで舟は動く。神へ近づこうと。真実は嘘となり、空想が現実となる。作者の存在さえも妖かしの霧の中へ消えていく。2019/07/31
ヘラジカ
31
言うまでもなく衒学的で難解、そして圧倒的に面白い。理解不能の作品も多いが、脳内で辛抱強く紐解くように読んでいくと呑まれるような感覚に襲われ、めくるめく迷宮世界へと踏み入ることができる。自分にとっては一種の麻薬のような働きをする小説群であった。2017/02/19
こーた
26
あらゆる事物を内包する〈円〉は、ただひとつの点に集約され、しかもその点は無数にある。むすんでひらいてとじる円環構造。ボルヘスの編んだこの迷宮に、永遠にとどまっていたい、そんな誘惑に駆られる。いや、この永遠という感覚さえ、いまという一点に集約される。なにが引用で、なにが歴史で、なにが創作なのか、迷いこんだら、わからなくなる。でもそれらをわけて考えることに、大した意味はない。真実の物語は、ただひとつしかないのだから。収録された作品は、ときにミステリのようで、またSFのようでもあり、そして数学的でさえある。(続2017/04/26
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- 和書
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