出版社内容情報
信仰の理想に生きるため，農地を売り親戚とも別れて聖地エルサレムに移住するイングマルソン一家．神と人間性，信仰と郷土愛の相剋を描いたこの壮大な物語は，ラーゲルレーヴ（1858‐1940）が実際に彼女の故郷で起った事件を題材に，熱狂的信仰に燃えた信徒たちが移住したエルサレムへもみずから旅をして，全力を傾けて取り組んだ作品である．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
twinsun
7
スウェーデン人の人付き合いの感覚の独特さも本書から感じることができた。思いやる先に触発され燃え上がった己を貫き通すことで思いが相手の想いを超えて覆いかぶさるかまるで素通りするかの強い融合か深い断裂、その間には素通りのようなよそよそしさがあるような感覚。だらだらしたなだらかな起伏の連続性を赦さない寂しさがある。無情にも北の故郷を棄ててエルサレムに根を張るものと放蕩息子のように故郷に舞い戻るもののいずれにも他方とは相いれない選んだ道がある。短編「神の平和」も味わい深い作品であった。2025/05/16
