出版社内容情報
二十世紀を代表する作家モラーヴィア(一九〇七‐九〇)の処女作.主人公の青年ミケーレは,自分をとりまく現実と自分とのずれを意識している.が,あらゆる行為に情熱が持てず,周囲に対して徹底した無関心におちこんでゆく.ローマの中産階級の退廃と,苦悩する若者を描いたこの作品は,当時のファッショ政権から発禁処分をうけた.
内容説明
リーザやマリーアグラツィアが発散する中年女性の倦怠の気配。彼女らとレーオとの爛れた関係。レーオは母親から娘カルラに関心を移し、しかもアルデンゴ家の財産一切をわがものにしようと企んでいる。そのすべてが分りながら、何もできない青年ミケーレの絶望。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
345
上巻よりは物語世界に投入しやすくなった。とは言っても、そこはきわめて閉ざされた狭量な世界である。したがって、相互の人間関係もまた過剰なくらいに濃密で息苦しい。そうした中にあって、最も感情を顕わにするのはマリーグラツィアだろう。ただし、彼女の情動は嫉妬に支配されており、いわば負のそれである。リーザには幾分か自由度があるとはいえ、それもまた半ばは諦観から来るものである。演劇的な意味で動きの大きいのはカルラであるが、読者は彼女の行動の不毛さにやるせない思いを抱くだろう。すべてに無関心なミケーレが極の中心なのか。2018/10/21
遥かなる想い
185
モラーヴィアが描く男女の不毛な愛と 性の世界は下巻も続く。1929年に書かれた この作品 著者はまだ 20歳..この若さで 本物語が醸し出す退廃、無関心、 けだるさを どうしたら描けるのだろう.. カルラの人生を投げたような思考は イタリアのこの時代の反映なのだろうか.. 仮面をつけた人びとが 舞台で台詞を 語っている..それを読者は遠くから見ている、 そんな風景だけが目に浮かぶ物語だった。2016/11/06
すえ
36
著者モラーヴィアは9歳で骨髄カリエスと診断され長く病床にあったが、すでにその頃に本処女作を着想し10代で書き上げ20歳で自費出版した。イタリア中産階級の退廃を描き、人間の心の奥に潜む深い闇を暴き出す。そこには闘病生活という絶望の中で物を書きたいという野望を持ち続け、ひとつの作品を産み出した執念が見えるかのよう。母親の愛人レーオに身も心も蹂躙された24歳の娘カルラの心の叫びが印象深い「こんな世の中に愛も共感もあるはずがない。ただ陰鬱な崩壊の感覚があるだけ…」このなんとも言えない負のエネルギーが凄い2020/08/31
えりか
26
嫉妬深い母親。「新しい人生」を待ちながらも、特に自ら動こうとはしない姉。世間と無感情な自分にズレを感じ悩める弟。自分のことにしか関心のない母の愛人。そして何だか空回ってみえる母の友人。それぞれがそれぞれに思惑を交差させながら話は進んでいきますが、それぞれの長い妄想が印象的。妄想だけで現実には、ほとんど何も劇的なことは起こらない。倦怠、頽廃、滑稽。まったく陰気で実に雨と灰色がよく似合う物語。2015/08/31
sabosashi
19
1.前半は五人の凡庸な関わり合いが描かれる。人物を描き出していく手際はそれなりに見事。でもそれから何を読み取ったらいいのか判然としない。読むのがやや苦。かような愛憎劇は古今東西、あらゆる時代に存在したのだろう。ところがのちにミケーレの焦燥感が際立ってくる。もちろんミケーレは無関心を装っているので本来は何もかかわりたくない。そんなミケーレが静から動へと動いたとき、この作品も内的に鋭さをおびてくる。つまり五人の抱える矛盾の集約点としてのミケーレの意識というところか。2025/11/07
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