出版社内容情報
十九世紀初頭,ナポレオンの侵入というロシヤが経験した未曾有の危機の時代を,雄大なスケールで描破した世界文学の最高峰.「歴史をつくるのは少数の英雄や為政者などではない」――巨匠の筆は五百人をこす登場人物ひとりひとりを心にくいまで個性豊かに描きだし,ここに歴史とロマンの一大交響楽が展開する.
内容説明
妻の死後、田舎に隠棲する傷心のアンドレイを甦らせたのはナターシャだった。だが若さゆえの過ちから少女は誘惑者の手に。苦境を救おうと奔走するピエールが冬空に見たのは、ナポレオンとの再対決を予感させる、巨大な一八一二年の彗星だった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
120
エレンの周りの人物…兄のアナトールや愛人のようなボリス、そして取り巻きの嫌らしさと、エレンの夫ピエールやアフローシモワらの真実を見る目との対比が見事。sしかし、彼らが評価する人の中においてもナターシャやアンドレイのように、周りに翻弄されてうまくいかない。この時代においては、恋愛はともかく、結婚というものに財産が切り離せなかったこともあるだろうが。オオカミ狩りの場面はとても残酷だった。トルストイは人道的考えのある人だったのだろうが、大変な狩り好きだったと知って非常に残念に思う。2016/06/16
ひろき@巨人の肩
110
ナターシャ、ソーニャ、マリヤ。三人のヒロインの青春を翻弄するロシア貴族社会での束縛だらけの恋愛模様。人間の愛憎とは時代が変われど普遍的なのだと思った。全ての悲しみを背負うピエールの今後が気になる展開。オペラや狩猟の精密な描写は、ロシア社会を疑似体験できて面白かった。2022/06/22
ベイス
70
この巻はなんといってもアナトールによるナターシャ誘拐計画の攻防。突如、風雲急を告げるサスペンス的展開がたまらない。ナターシャもソーニャもなんて魅力的なんだろう。そしてマリアも。男性諸君もそれぞれに惹かれるものがあるが、より輝いているのは女性たちだと感じる。そしてみな、大人になっていく。2022/08/27
翔亀
56
全6冊の3冊目。第2部第3-5篇。前半終了。やってくれるねトルストイ。最後は興奮冷めやらずに一気読み。ナターシャ、アンドレイ、ピエールの主人公が、見事にはまった愛と友情の大大ドラマ。読後直後の興奮のまま書いてしまうが(6冊分書けるから1冊位はこんな感想があってもいいか)、人間の底知れない心理にこれほど深く圧倒されたのは久ぶりだ。三人のこれまでの単線でない長い軌跡が書き込まれてきたためか、その変貌に、にも拘らずの変わらぬ意思に、一喜一憂。そして、その計り知れなさに満腹満腹。三人の苦悩と喜悦が眼前に浮かぶ。2016/02/02
ころこ
48
ナターシャ中心にロストプ家に焦点が当たります。読み易い印象を与えるのでしょうが、物語の進行は失速、中だるみをしているようにみえます。ニコライ、後半にはアナトールとナターシャの前に登場する男性は、アンドレイを計るモノサシに過ぎないことは明らかです。ところが、ある事件によりアンドレイが長すぎるモノサシだったことが判明します。本作ではアンドレイは戦争の象徴のような人物です。戦争とは問題を解決するが、長すぎるモノサシなのでしょうか。犬が好きな読者には、変わり種の大型犬ボルゾイの登場は忘れ難い場面です。2022/03/25