出版社内容情報
深い闇の彼方から現れては消えてゆく幻想の数々…….ベルトラン(一八〇七‐四一)は,韻文詩全盛の時代に散文詩という独自の様式を創造した.『夜のガスパール』は彼が残した唯一の詩集で,絵画的で幽玄な美しさに満ちている.没後長らく忘れられていたが,ボードレールに発掘されマラルメなど後世の詩人に大きな影響を与えた.
内容説明
深い闇の彼方から現れては消えてゆく幻想の数々…。埋もれた詩人ベルトランによる幽玄な美しさを湛えた散文詩の世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
119
散文詩という形式を初めて作り出した作品。散文詩というと、ボードレールの『巴里の憂鬱』を思い出すが、雰囲気が似ている。訳者によるとこの作品がボードレールに大きな影響を与えたそうだ。詩のように自由奔放過ぎず、散文のように整い過ぎずと難しい文章の綱渡りに成功していると思った。文章の意味は理解しづらい所があるが、作者は意味を伝えようとしてこれを書いたのではないと思う。読者の心の奥まで入っていく幻想的なイメージの連なりと、弾むような言葉のリズムに酔えば良いのだ。2016/02/21
うなぎ
20
ラヴェル「夜のガスパール」の元ネタの散文詩集。夜のガスパールとは悪魔のこと。副題にレンブラント、カロー風の幻想曲とあるように、暗闇で密やかに金色に輝くレンブラントの絵と、異常に細かくて残酷な場面を描くジャック・カロの版画の両方の雰囲気をミックスした夜の世界と幻想を描いた詩。意味を理解するより、絵画を眺めるような気分で読む詩。ラヴェルの曲に出てきた、オンディーヌ(美女の姿をした水妖)、スカルボ(不気味な小人)、夕焼けに照らされる死体のぶらさがる絞首台はどれも雰囲気たっぷり。2019/05/23
ラウリスタ~
12
古本屋の埃のなかから掘り出す本っていうのがこれほど似つかわしい本も珍しいだろう。詩人の存命中には完全に無視され、ボードレールやマラルメらによって紹介され(日本にはラフカディオ・ハーン!)、わずかながらの読者を得るものの、爆発的な人気を得ることも、完全に忘れられることもなく、細々と下水道の中に生き続けるような散文詩集。「レンブラント、カロー風の幻想曲」っていう副題が重要。絵画を描くように詩(散文詩)を書く試み。19世紀後半に重要な作品が出現するフランス散文詩集の嚆矢といえる作品。2014/09/10
蛇の婿
8
なんと言うか、私が冒頭を読んで「あっ!そういうことか!凄い!」とか覚えた興奮は読了したら巻末の訳注においてすっかり説明されていたりして、もうホント読書メーターに興奮そのまま呟いちゃった事とか穴があったら入りたいんですけど私!…まあ…この作品、冒頭は確かに凄いんですけどラストに近付くに従ってわりと普通の詩になってしまうのが難点といえば難点ですか。もちろんそうなってしまう理由もあって、これも訳注に説明されていたりもしますが。…もうね……トホホというか…2014/11/17
paluko
7
1980年前後(たぶん)に「岩波文庫で出ている筈!」と幻視して古書店街を彷徨い探した因縁の一冊。岩波文庫での出版は1991年です、念のため。ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール」の元になったのはp.110「オンディーヌ」p.202「絞首台」p.204「スカルボ」の三篇です。p.210から始まる「第一の序文の訳注」を読むと猛烈にディジョンを訪ねてみたくなります。2019/09/22