出版社内容情報
長篇小説の国フランスでもいま短篇小説が注目されつつある.作家たちは「フィクション芸術のエッセンス」とよばれるにふさわしい表現を目ざして芸を競い,おのれのエスプリを証明する場として短篇を書く.本書所収のリラダン,アポリネール,デュラスら,世紀末から現代にいたる作家たちの技の競演に,読者は堪能されるにちがいない.
内容説明
長篇小説の国フランスでもいま短篇小説が注目されつつある。作家たちは「フィクション芸術のエッセンス」とよばれるにふさわしい表現を目ざして芸を競い、おのれのエスプリを証明する場として短篇を書くのだ。本書所収のリラダン、アポリネール、デュラスら、世紀末から現代にいたる作家たちの技の競演。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
101
美しく健康的なものはつまらない? 欠けていたり、傷をもっていたり、不具合がある…、そういうものにフランス人は美を見い出しているのだろうか。きれいなすべすべしたお腹の白い肌の上に赤く盛り上がった傷跡をなぞるような小品たち。デオンの『ジャスミンの香り』、ナポリの夏の海でのバカンス、むせ返るように暑いだろうに、大理石の中から覗いているようなひんやりとした心地好さ。グルニエの『フラゴナールの婚約者』、紹介された史跡は本当にあるの?この目で見たい。そして、アレーの『親切な恋人』、私の冷たい足の指もお腹で暖めて。2015/02/02
えりか
55
謎めいた物語。幻想の世界。魅惑の短編集。「ペルーの鳥」何千もの鳥の死体が落ちている浜辺で出会う男女。怪奇と幻想の美しさは一番。失望と希望を繰り返し、死に場所を求めながらも愛への誘惑にかられる男。死と愛のコントラストが詩的で陶酔。「タナトス・パレス・ホテル」も死と愛。さらにオチもいい。「結婚相談所」もオチがいい。さらにちょっと可愛らしい。「親切な恋人」可愛らしいといえば、こちらは最高に可愛らしい。こんな恋人ほしい。「ジャスミンの香り」は最高に美しいし、「大蛇」は気持ちの悪さと艶かしさがすばらしかった。2018/02/05
藤月はな(灯れ松明の火)
32
「親切な恋人」はシュール且つエロティック、「ある歯医者の話」は不条理さが可笑しみを出しており、「アリス」は痛々しいまでの怖い純情さの結末が印象的。「オノレ・シュブラックの失踪」はフランス版「透明人間」。「ローズ・ルルダン」の思春期での逆転に対する妄想と後の回想での問題の小ささに気づく場面が対比的。「バイオリンの声をした娘」の魔法が解けるような不安さ、「クリスティーヌ」の夢から現実へと覚めた恐ろしさも、「大佐の写真」と「フラゴールの婚約者」の底知れない死や凶暴性の暗喩が怖いです。2012/10/20
マリカ
29
シュールで奇妙なサプライズたっぷりのアトラクションばかりのテーマパークのようなフランス文学の傑作短編集。予想外にかなり楽しめて、満足満足。初読みの作家が半分もいましたが、初めての作家の作品の方が、先入観や過度な期待なしに読めてより楽しめたかもしれません。この短編集をきっかけにフランス文学の世界が広がりそうです。2012/04/04
かわうそ
26
怪奇幻想テイストの作品が多数盛り込まれていて抜群に楽しい充実の一冊。「ヴェラ」「ある歯科医の話」「タナトス・パレス・ホテル」などお気に入りをあげればきりがないけど、マルグリット・デュラス「大蛇」はとにかく気持ち悪くて最高です。2015/12/30
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- 和書
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