出版社内容情報
小説家ロラン(一八六六-一九四四)によるミレー伝.人生の悲しみをありのままにみつめ,人間と自然に対する愛情を描いた画家ミレー.ロランはミレー自身の言葉を豊富に引用しながら,深い共感をもってその本質を解明してゆく.ロランの芸術観をうかがいうる貴重な文献であるとともに,ミレーの評価を決定した歴史的名著.
内容説明
小説家ロラン(1866‐1944)によるミレー伝。人生の悲しみをありのままにみつめ、人間と自然に対する愛情を描いた画家ミレー。ロランはミレー自身の言葉を豊富に引用しながら、深い共感をもってその本質を解明してゆく。ロランの芸術観をうかがいうる貴重な文献であるとともに、ミレーの評価を決定した歴史的名著。図版多数。
目次
1 ミレーとその作品との精神的特質―フランス美術における彼の位置
2 バルビゾン定住までのミレーの生活
3 バルビゾンにおけるミレー
4 ミレーの作品および美術理論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bashlier
24
5/5 人物研究の傑作。ステレオタイプと異なる意見を述べるのは非常に難しいものです。この作品は、それを如何にしてうまくやっていくかを示してくれます。”貴族批判画ばかり描いて苦しんだものの、最後は貴族側が折れて認められた革新者”とのイメージが強いミレー。しかし、ロランによれば周囲がそのように仕立てただけで、「彼は純粋に農村を描きたかっただけで政治なんか興味はない」と。真逆の主張を丁寧に重ねていきます。分野こそ違いますが、調査系のお仕事をされている方にはお役に立つのではないでしょうか。2023/07/15
新田新一
15
ロマン・ロランによる画家ミレーの評伝。ミレーの絵は好きなのですが、ミレーの人生については何も知らなかったので、この本を読めて良かったです。一生貧困と闘いながら、キリスト教の信仰心を捨てないで、真摯に生きた画家でした。絵の勉強のためにパリに行っても、パリの雰囲気に馴染めず、ルーブル美術館ばかり行っていたエピソードは微笑ましいです。芸術のための芸術ではなく、生活のための芸術を追求したミレーの人生に深く感動しました。ミレーの絵にある静謐さは、この態度から来たものだと思います。2023/11/21
壱萬参仟縁
13
『種まく人』の身振りは、天に向かって「いくつかみかの葡萄弾」を投げつける、民衆の威嚇のように見えた(6頁)。そうかなぁ? ミレーは農民出身ゆえに、農民の消極的な徳性を引き出すことができた(22頁)。当事者主権。農民画家(32頁)。南ノルマンディー主神で吃りもあり、動作がのろく、人見知りし、慎重な物言いの人物がミレー(46-47頁)。田舎者扱いか。1857年『落ち穂拾い』への酷評(60頁)。貧困の画というが、それを表現したかったわけではないのではないか? エドモン・アブーだけが厳粛な素朴さを理解したという。2014/01/10
散歩中
4
敬虔なキリスト教徒でパリの虚飾を嫌い、パリのルーブル美術館に通い詰め、バルビゾンという田舎で農民の生活と自然を見つめ、極限の貧困に苦しみながら静かに耐え、家族を深く愛した画家。 純粋な魂を持ったゴッホはミレーを死ぬまで敬愛したという。トルストイの「芸術とはなにか」とたまたま並行して読んでいたが、峻烈なトルストイがミレーを真の芸術家と言っており妙に納得した。2023/05/18
ななっち
3
ロマン・ロランといえば、ヴェートベンをモデルにした「ジャン・クリストフ」以来ですが、ミレーについては物語というよりは資料をもとに忠実に史実を追っているんですね。朴訥な芸術家に惹かれる気持ちは非常によく分かります。「晩鐘」や「落穂ひろい」が発表当時ほとんど評価されていなかったという事実に驚きます。2013/04/06