出版社内容情報
あらゆる偏見や旧習を打破し,自然や人間を事実として観察分析し,実証主義的・科学的な文学を創造しようとしたゾラは,本書において「大地」と同様,人間の獣性を白日の下にさらけ出した.バルザック,フローベールのリアリズムをいっそう徹底させ,仮借するところなく人間性に対決するゾラの姿は,今も読者の共感を呼ぶであろう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
271
下巻に入ってスピード感は上がるが、同時に凄惨さは増してゆく。そもそもの発端であったルボーによる列車内でのグランモラン裁判長の殺害、そしてジャックによるセヴリーヌの殺害、さらにはミザールの毒殺事件、フロールによる列車転覆事故で多数の死者が出る。これではもう獣人ばかりではないか。ラストシーンがまた凄まじい。疾駆する機関車でのジャックとペクーの死闘は、両者の転落死によって終わる。さらには、この先に貨物列車に載せられている多数の兵士たちの悲劇が待ち受けている。それは大事故であるかもしれないし、たとえ免れた⇒2024/09/14
遥かなる想い
151
裁判長殺人の犯人が 捕まらない中、 ジャックとセヴリーヌの関係は進む。 暴発する二人の獣性は止まることを 知らない…推理小説の雰囲気を 醸し出しながら、物語は進むが… ゾラは 鬱積する民衆の憎悪、獣性を 描こうとしたのだろうか? ひどく 暴力的で あっけない 幕引きだった。2018/12/13
藤月はな(灯れ松明の火)
76
この巻での主役は機関車といっても過言ではないです。しかし、鉄道事故のシーンは辛い。苦悩して殺人衝動を抱えるジャックよりも盗みへの罪悪感に苦しむも殺人への罪は感じないルボゥー氏、淫欲に耽りながら殺人教唆するセブリーヌ、財産目当てで義母を毒殺するミザール、浮気をしながらそれを女のせいにするぺクー、無責任なドゥニズ判事の方が人でなしにも思える。軽佻浮薄なドゥニズ判事と先入観で掌返しにカビューシュを貶める周囲によって冤罪が確定した事が当時に起こった事件を踏まえて描かれたということがより、陰惨さを際立たせています。2017/08/27
yutaro sata
30
上手く逃れたつもりが、そのことにより段々追い込まれていく様子に、読んでいてこちらも苦い汗をかかされるような感じ。それはともかくこの下巻になっての事件の諸々は、なんか作者が乗っていて楽しそうに書いているなあ、と思ったのでした。実際はどうだったんだろう。あとがきを読んでいると『ルーゴン・マッカール叢書』が気になってきますね。2023/06/14
LUNE MER
17
下巻ではジャックの運転する機関車も主役となり、まだ近代的であった蒸気機関車と奮闘する機関士達の物語としてもなかなか迫力ある。ジャックへの想いに囚われるフロールがかなり気になる存在だったのだが、嫉妬心ゆえに無関係の人々を巻き込むことを厭わない脱線事故を引き起こすに至る大波乱。殺人衝動を抑え込むジャックの周囲で次々と殺意が遂行され、ある意味でジャックだけが取り残される展開。殺人嗜好に抗えずにセヴリーヌを手にかけるところまでは予想されたが、その後の顛末は予想を超えてた。代表作ではないかもしれないが、ゾラ凄い。2021/06/08
-
- 和書
- どんどん話そうドイツ語