出版社内容情報
ブヴァールとペキュシェというふたりの平凡な男が,いろいろの社会体験を試みる話で,ブルジョワ社会の愚劣さを諷刺したリアリズム小説.このふたりは,小作人と農業について語るかと思えば,村長と村の政治について議論し,貴族と文学を談ずる.また医者に会って科学を論じ,ボルダン夫人とは恋愛論議に花を咲かせる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
257
上巻では、ブヴァールとペキュシェの二人は自然科学に傾倒していたが、この巻では人文社会科学である。まず文学が俎上に上るが、ウオルター・スコットやデュマには辛辣で、一方ジョルジュ・サンドやバルザックにはやや寛容だ。この巻でも相変わらず物語的な章段には乏しいが、それでもここでは二人それぞれの恋が語られる。とはいってもハイライトをなすほどでもなく、エピソード程度なのだが。まさに連句における「恋の定座」といった趣きか。この巻はフローベールの文学観や社会観(とりわけ二月革命から六月騒動あたり)が、直接読み取れる。2015/12/30
NAO
51
ウォルター・スコットを皮切りに、ジョルジュ・サンド、バルザックと読み進め、自らも小説家になろうと夢見ていたかと思うと、ブヴァールとペキュシェの興味は政治へ、恋へと移り行き、ついには心霊術にまで手を伸ばす。金利生活を送るブルジョアの俗物根性はさらに磨きがかかったという感じだが、何をしても失敗に終わってしまうのがあまりにも痛ましい。彼らに反省という言葉はないのだろうか。2016/06/07
秋良
17
二人の学問つまみ食いは続き、文学から政治、合間に恋(すぐに終了)、医学、民間療法、果てはオカルティズムにまで手を出す。19世紀〜20世紀初頭に降霊術とか流行ってたって聞いたことがあるので、これも一つの正しきブルジョワの姿なのかもしれない。そして最後は自殺を試みる。思春期か!おっさんなのに!なお、パリで革命が起きた時の地方の反応が読めるのは面白い。2024/06/10
壱萬参仟縁
17
ペキュシェが感性と理念を目標とするのに対して、 ブヴァールは形像と色彩とを狙いとした(29頁)。 美とは、「シェーリングによれば、限りあるものによって表現される無限性。 リードによれば、幽玄不可思議な力。ジョフロワによれば、不可分離の作為。 ド・メストルによれば、道徳の意に副うもの。またル・ペール・アンドレによれば 理性にかなうもの」(30頁)。 2014/03/11
きゅー
12
章ごとに一つのテーマが設けられており、中巻では文学、恋愛談、心霊学、心理学などが取り上げられている。そのため、興味がある分野の章は面白いけれど、そうでない章はちんぷんかんぷん。一話完結で気は楽だけど、全体を通しての複雑さやまとまりには欠ける気がする。2015/06/30