出版社内容情報
スペインの片田舎からサラマンカの大学に留学しようと故郷を去ったジル・ブラースが,山賊に捕えられたかと思うと貴婦人と脱出し,巨万の富を集めては一文なしになり,丁稚奉公から大臣秘書等々社会のあらゆる層を浮沈しながら身につけてゆくのは単なる処世術ではない.それゆえにゲーテの「教養小説」に匹敵しうるのである.フランス最初の職業的文士といわれるル・サージュ(1668‐1747)の代表作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
122
旅しながらの冒険記としては、書かれた時期が20年ほどしか違わないイギリスのフィールディングと比べてしまうが、フィールディングの主人公たちと比べ、ジル・ブラースは小者だ。育った家によるものかどうか、行く先々でジルはなぜか召使い扱いばかり。それで心地よさそうだから、まあこれはこれで良し。最初は心配した彼の無垢さは無くなったが、まさに身を持ってした世間勉強のおかげでしたたかさを身に付けるも、生来の人の良さが物語をイヤにさせない。登場人物のなかでは、ロランド隊長が好き。巡る旅の途中でまた会わないかしら。2017/10/20
takeakisky
1
ジル・ブラースには鷹揚さがない。細かく計算高い男だ。そんな食い足りない部分は他の登場人物たちの話中話がうめる。ジル・ブラースの蚊帳の外の脇役ぶりが微笑ましい。どこまでも嫌味のないストーリー。2023/08/20